徳島大学の研究グループは,LEDの放射特性を利用した病原微生物制御法を確立した(ニュースリリース)。
近年,高病原性のウイルス・細菌による新興・再興感染症の増加や多剤耐性細菌の出現により,抗菌薬など薬剤のみ感染症コントロールが困難になりつつある。また,医療品や食品のグローバルな自由化が進み,薬剤フリーで病原微生物を制御するに対する手法の開発が求められている。
そこで研究グループは,発光ダイオード(LED)の放射特性を利用した病原微生物の感染制御に着目した。LEDは特殊なフィルターを介さずに特異的な波長を発光させることが可能。また,省電力・長寿命かつ小型化が可能で水銀フリーであることから,より安全性が求められる分野への応用が期待される。
研究グループでは,様々な波長のLEDを用いて病原微生物の光応答性に関する研究を行なってきた。UVC(254nm)とUVA(365nm)とでは,病原性細菌に与える傷害のメカニズムが異なることや,この2つの波長を同時に照射すると傷害性が相乗されることを見出した。また,UVA照射よって活性が制御される2つタンパク質を見出した。
また,これら紫外線の波長の違いよる制御の特異性はウイルスやファージ,微細藻類,原虫など細菌以外の病原微生物でも確認してきた。
これらのエビデンスをもとに,医科栄養学科に設置されたメタボロームシステムを用いた解析を取り入れるなど,トランスオミクス解析による詳細な制御機構の解明を行なっている。これらLED照射光による病原微生物の制御技術を医療衛生や食品衛生の分野へ応用するために,多くの企業と応用技術及び新規照射装置の開発を共同で進めているとしている。