九州大学,山口大学,京都大学,名古屋大学,岡山大学の共同研究グループは,青色光と二酸化炭素に応答した気孔開閉運動を制御する分子機構の一端を明らかにした(ニュースリリース)。
高等植物の葉の表皮には,一対の「孔辺細胞」と呼ばれる高度に分化した細胞からなる「気孔」という小孔が存在する。植物は気孔を開くことで,光合成に必要な二酸化炭素を吸収し,同時に蒸散により水を放出することで,土壌の栄養分を根から吸収するための駆動力を得ている。
光に応答して気孔が開くことは,進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの息子であるフランシス・ダーウィンにより発見された。その後の研究で,光のなかでも特に400~500nm付近の青色光が気孔開口に重要で,植物の光合成を増大することがわかった。
青色光とは反対に高濃度の二酸化炭素(CO2)は,気孔閉鎖を,低濃度CO2は開口を誘導することがわかっている。気孔開度は植物の生育に大きな影響を与えるので,大気中のCO2濃度の変動が,農作物に与える影響を理解し,その対策を考えるためにも,青色光とCO2による気孔開閉運動の情報統合機構の解明が求められていた。
今回研究グループは,青色光とCO2による気孔開閉運動の制御シグナルに関わる新奇タンパク質リン酸化酵素を同定し,CBC(CONVERGENCE OF BLUE LIGHT and CO2)と命名した。
発見したCBCは青色光と低濃度CO2による気孔開口の増大を引き起こす。この研究成果は,変動する大気中の二酸化炭素濃度が農作物の生育に与える影響の理解に貢献する。また二酸化炭素の吸収効率を高めた農作物の開発技術への応用が期待されるという。