東京理科大学の研究グループは,民生用デバイスを活用することで従来の衛星搭載計算機の10分の1のコストを実現する搭載計算機と世界最軽量級の衛星用超小型カメラを開発し,ASTROSCALE PTE. LTD.(アストロスケール社)開発の,微小デブリ観測衛星「IDEA OSG 1」に搭載,11月28日にロシアボストーチヌイ宇宙基地から打ち上げられる。
研究グループではスペースデブリの除去技術,特に画像によるデブリへの接近誘導技術について研究を進め,そのキー技術となる搭載計算機と小型カメラの開発を進め,その成果が「IDEAOSG 1」の実現に大きく貢献した。また,研究グループの木村教授は,軌道上デブリの除去を実現するために,アストロスケール社の技術顧問として,同社の衛星開発に協力してきた。
開発したカメラと衛星搭載計算機は,民生用デバイスを活用して,非常に低コストで高度な自律制御を実現した。衛星搭載計算機は10 分の1以下のコストで,演算能力として360MIPS,1.4GFLOPSと従来の小型用衛星搭載計算機の3〜30倍の演算能力を実現した。
カメラシステムについては複数のカメラヘッドをもち,デブリの衝突によって発生する,デブリセンサーの衝突痕や衛星周囲の状況の監視を実現する。特に衛星外の状況監視を行なうカメラヘッドは,総質量5g以下という世界最軽量級を実現した。
今回の「IDEA OSG 1」が成功することにより,微小デブリについての貴重な情報が得られると共に,スペースデブリ除去に関連する活動が大きく発展することが期待される。
また,小型衛星は国内外において近年急速にその利用が広まっており,今回搭載機器の実証に成功することによって,小型衛星の能力を飛躍的に高め,その利用の可能性を広げる上で非常に大きな影響を与える事も期待される。なお,民間の人工衛星の頭脳として,大学が開発した計算機が搭載されるのは国内初。