ソニーは,スイス・チューリッヒにあるIBMチューリッヒ研究所と共同で,テープストレージメディアとして業界最高の面記録密度201Gbit/inch2を達成した磁気テープストレージ技術を開発した(ニュースリリース)。
この面記録密度は,従来の磁気テープストレージメディア(9.6Gbit/inch2)の約20倍となるもの。従来技術によるデータカートリッジ1巻あたり15テラバイト(TB)の記録容量に対し,約330TBの大容量データ記録が可能となる。
テープストレージメディアの高記録密度化のためには,磁気テープと磁気ヘッドの距離(スペーシング)を狭くすることが重要となる。また,スペーシングの縮小に伴い,テープ表面と磁気ヘッドの接点の摩擦が上昇する傾向があるが,より高速で高容量な記録・再生のためには摩擦を抑え,磁気ヘッドがテープ表面を滑らかに走行できるようにする必要がある。
今回の磁気テープ技術の確立にあたり,ソニーはテープ表面と磁気ヘッドの間に塗布する潤滑剤を新たに開発した。この潤滑剤は,テープ表面と磁気ヘッドの走行摩擦を抑える低摩擦特性と,テープ磁性面と潤滑剤の接合を維持するための高耐久性という二つの特性を実現した。
さらに,この技術は微細な磁性粒子(グレイン)を有するナノ・グレイン(Nano grain)磁性膜の長尺化を可能とした。一般的に磁気テープの成膜時には,製造装置から発生する不純物ガスの影響により,磁性膜の結晶配向の乱れや大きさのばらつきが生じることが課題だった。
今回,不純物ガスの発生を抑える新たなプロセス技術を開発し,それを磁性粒子の大きさが平均7nmというナノ・グレイン磁性膜のスパッタ法による成膜に用いることで長尺成膜を実現した。この技術により、1000mを超えるテープ長が必要なテープストレージカートリッジ製造の基礎となるプロセス技術を確立した。
そして,IBMチューリッヒ研究所が開発した記録および再生用ヘッドや先進的なサーボ制御技術,革新的な信号処理アルゴリズム等を組み合わせることで,現在主流の塗布型データストレージ用テープメディアの約20倍となる業界最高面記録密度を達成した。