西松建設とトンネル計測システムのマックは,トンネルの変位を迅速かつ面的に計測可能な「車載式トンネル3Dスキャニングシステム」を開発した(ニュースリリース)。
山岳トンネルにおける内空変位計測の手法として,光波測距儀と角度を測るセオドライトとを組み合わせた,トータルステーションを用いた計測が広く採用されている。この手法は計測精度が良い反面,20m程度の間隔で実施されるため,トンネル壁面の部分的な変位しか把握できないという問題があった。
壁面の全体的な変位を補完的に把握する手法として,3Dレーザースキャナで壁面全体の形状を繰り返し計測し,その差分から変位量を算出する手法がある。しかし,この手法では,3Dレーザースキャナを始めとした機器一式を計測の度に設置し,手動で操作するため,40分程度の計測時間を要する。そのため,掘削作業の合間の計測が困難な場合が多く,日々の計測には不向きであるという問題があった。
開発したシステムは,3Dレーザースキャナやプリズム内蔵型基準球等の計測機器一式を計測車に搭載する。これにより,計測箇所への移動・停止後速やかに内空変位を計測することができ,準備や片付けを含む計測時間を大幅に短縮することが可能となった。実際のトンネルにおける試験計測の結果,計測時間は6分程度と,計測の度に機器一式を設置する従来手法と比較して1/6程度に短縮できることを確認した。
今回開発したシステムは,西松建設が施工中のトンネル現場へ本年7月頃に導入する計画。今後は現場適用を通してシステムを継続的に改良するとともに,他の山岳トンネル現場へ展開させていきたいとしている。