東工大ら,CO2を高効率に再資源化する光触媒を開発

東京工業大学らの研究グループは,ルテニウム(Ru)複核錯体と窒化炭素からなる融合光触媒が,可視光照射下での二酸化炭素(CO2)のギ酸への還元的変換反応に対して特異的に高い活性を示すことを発見した(ニュースリリース)。

金属錯体や半導体を光触媒としたCO2還元は,ギ酸や一酸化炭素といった有用物質を常温常圧下で製造できる反応として注目され,30年以上も前から国内外で精力的に研究されている。

研究グループはこれまでに,有機高分子半導体である窒化炭素(C3N4)とRu錯体を融合したハイブリッド材料を光触媒とすることで、太陽光の主成分である可視光照射下、常温常圧下でCO2を還元することに成功していた。だが,耐久性と選択率の向上が課題となっていた。特に,この複合光触媒の高効率化には,C3N4からRu錯体への電子(e–)移動の促進が必要となっていた。

研究グループは,尿素を熱分解して得られるシート状C3N4が,ホスフォン酸基を吸着部位としてもつRu錯体を強固に吸着できることを発見した。これにより,C3N4からRu錯体への効率的な電子移動が実現し,その結果としてCO2光還元反応の高効率化に成功した。

光触媒の合成条件,およびCO2光還元の反応条件を詳しく検討した結果,CO2溶解度の低い水中でも高い光触媒活性が得られることがわかった。CO2を還元してギ酸を生成する本反応のターンオーバー数は従来の660から2090に向上し,75%にとどまっていたCO2還元の選択率は最大で99%に達した。これらの値は,これまでに報告されてきた類似光触媒系を大きく超え,世界最高値となった。

今回の研究成果は,化学結合形成に利用可能な表面官能基をほとんどもたないC3N4の表面が,特別な化学処理を経ることなく有用な化学反応系構築に利用できることを示している。この反応で得られるギ酸は,水素を貯蔵・輸送するエネルギーキャリアとして有用だが,組み合わせる錯体を変えることで,化学燃料として価値の高い一酸化炭素を高い選択率で得ることも可能になる。

また,C3N4は炭素や窒素を含む安価で単純な有機物から容易に合成できる。主構成元素である炭素や窒素以外の元素を取り込むことで,よりエネルギーの小さい可視光の有効利用も可能になり,ひいては太陽光エネルギーの有効利用につながると期待されるとしている。

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