東北大学は,室温で動作する,高感度かつ高分解能の強磁性トンネル接合(MTJ)生体磁場センサーの高出力化に成功した(ニュースリリース)。
現状の心磁計,脳磁計には,超伝導量子干渉素子(SQUID)が用いられている。しかし,現行のSQUIDを用いた心磁計,脳磁計では素子を低温に保つために高額な液体ヘリウムが必須であること,液体ヘリウムを貯蔵するためのデュワーによって,センサーと測定対象物の距離が離れてしまうことで空間分解能が低下し,また,観測する信号が小さくなってしまう問題がある。
一方,開発した強磁性トンネル接合(MTJ)素子を利用したセンサーは室温動作が可能であり,密着型,かつ,小型化に利点を有しており,SQUIDが抱えている諸問題を全てクリアできる。
研究では高出力が期待できる新材料および新素子構造の適用により,従来のMTJセンサーと比較して,1,500倍の出力向上を実現した。すでに開発を終えている低ノイズアンプとこの素子を組み合わせることにより,約15倍の感度向上が期待でき,例えば心磁図測定に際してデータを繰り返し積算する必要がなくリアルタイムで計測することが可能な感度となる。
室温で動作するデバイスでこのような高感度を達成したのは世界で初めて。また,この技術を用いることで,超低磁場室温核磁気共鳴(NMR)の観測に成功した。
現段階ではまだプロトン(水)の磁気共鳴信号の観測のみだが,このMTJセンサーを使用した画期的な磁気共鳴画像診断法(MRI)の実現へとつながる可能性があるとしている。