日本電信電話(NTT),日立製作所,沖電気工業,慶應義塾大学,KDDI総合研究所,古河電気工業の6機関は,2030年以降を見据えた先進的な研究として,「エラスティック光アグリゲーションネットワーク(EλAN:エラン)技術」の研究課題に取り組み,ネットワークの自律的復旧の実験に成功した(ニュースリリース)。
EλANは,加入者に近いアクセス局舎に配置している局内装置(OLT)を,メトロネットワークの回線を集線(アグリゲーション)するコアネットワークに近いメトロ局舎に配置し,加入者からメトロ局舎を光信号のまま伝送するネットワーク。
光ファイバー伝送路網には波長選択スイッチを配置し,光信号の経路を冗長化し自律的に変更可能とすることで信頼性を確保する。また,光-電気-光変換処理が不要となり,ネットワーク全体の低伝送遅延化や低消費電力化の効果も期待される。
またEλANでは,極めて優れた光周波数利用効率を実現できるデジタルコヒーレントOFDM伝送方式を用いるとともに,適応変復調技術を活用することにより,大規模なマルチサービス収容および伸縮自在(エラスティック)な通信速度・光周波数帯域の割当を行なう。
さらに,世界で初めて,デジタルコヒーレント適応変復調OFDM伝送方式に,OLT内動的帯域割当アルゴリズム技術を適用することにより,メトロ局舎からの宅内装置(ONU)までの距離(収容距離)に依存せず,どのユーザーにも公平な通信速度を割り当てるよう制御する。
6機関は新規開発した革新的技術を結集し,EλANの有用性・信頼性について機能検証機で実験を行なった。具体的には,最大伝送距離 40km,1波長当たりの最大通信速度10Gbit/s,最大収容端末数512を模擬した実験系において,伸縮自在な通信速度・光周波数帯域割当機能を確認するとともに,あるメトロ局舎が被災したことを想定したユースケースの検証を行なった。
その結果,10km離れた場所に残された別のメトロ局舎が,被災したメトロ局舎に接続されていたサービスを,10秒以内に自律的にサービス断絶前と同じ通信速度で再接続する実験に世界で初めて成功した。