岡山大ら,光で働く新イオンポンプを発見

岡山大学と東京大学の研究グループは,真正細菌から膜タンパク質のロドプシン「RxR」を発見。RxR の機能を解析し,世界で最も安定な光駆動性イオンポンプであることを明らかにした(ニュースリリース)。

イオン(H+,Na+,K+,Ca2+など)は,生物にとって必須の物質。例えば,カルシウムイオン(Ca2+)がないと骨はできず,血液中のカリウムイオン(K+)が2倍になっただけで,心臓は停止してしまう。

体の中ではイオン輸送体がイオン濃度を厳密に調節している。イオン輸送体は,ヒトを含めた全ての生物の細胞膜に存在する膜タンパク質で,さまざまな生命機能に関与している。例えば,胃酸の分泌や生命活動に必須なエネルギーの源となる物質(ATP)の合成に関わるイオンポンプや,筋収縮や神経伝導に関わるイオンチャネルがある。

また,医薬品の約16%がイオン輸送体をターゲットとしている。つまり,イオン輸送体の研究は,基礎研究にとどまらず,医薬品開発においても重要となる。

岡山大学では,イオン輸送体の中でも,色の変化で活性を確かめられるロドプシンについて研究している。ロドプシンは光に反応して機能を示す膜タンパク質で,イオン輸送に加えて,視覚応答,概日リズム,タンパク質発現調節などを担っている。

今回の研究で,これまでの光駆動イオン輸送体の安定性の世界記録を一気に約16倍更新することに成功した。この高安定性が生まれるメカニズムを理解することができれば,他の不安定なイオン輸送体の安定化とそれに基づく機能解析に大きな弾みがつくことが予想される。

また,生命機能を光で操作する技術(オプトジェネティクス)への展開や,光応答性を利用した光応答タンパク質材料(光エネルギー変換体)としての利用を通じて,光の利用による物質材料・生命機能研究への新展開が期待されるとしている。

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