東京都市大学,富山県立大学,城西ニットらの研究チームは,これまで困難だった,生産現場における複雑な立体構造を有する経編(たてあみ)ニットのカメラを用いたオンライン検査・欠陥検出に成功した(ニュースリリース)。
布織物製品の工場では,生産効率向上のため,欠陥を自動検出するシステムが必要とされている。しかし,スポーツウェア等で多用される経編ニットは,構造が立体的で複雑なため,レーザー照射等の既存方法では欠陥を検出することが困難だった。そこで研究では,2種類のフィルタを開発して,画像処理による経編ニットの欠陥検出法を考案し,検査の全自動化を可能にした。
まず,布織機上部に設置したCCDカメラにより,流れる布を撮影する。この際,布の端部はわずかに収縮し布が傾く場合があるため補正する。次に,織り目模様の周期を一次元離散フーリエ変換によって抽出し,検査中の経編ニットに最適なブロック幅を算出,画像処理で用いる欠陥検出のためのフィルタを自動的に作成する。
最後に,連続して撮影された複数の画像データから得られた2種類のフィルタ出力値の分布傾向を正規分布と比較することで,手動による閾値設定を行なわずに欠陥の有無を自動判定する。
布のような織物製品では,製造時に布織機に取り込まれる糸が切れ,糸が足りないまま織り進むことで欠陥品が生じる。この欠陥は布織機を停止し,糸を元の状態に戻さない限り発生し続けるため,可能な限り早く欠陥を発見することが求められる。
スポーツウェア等で多用される経編ニットは,特徴として蒸散作用等を狙った複雑な立体構造を持つことにある。このことから,布地に厚い部分と薄い部分が存在し,欠陥発生時には,薄い部分が広がる場合と布に穴が開く場合の2パターンがあり,従来のレーザー照射等による自動検査技術は適用できなかった。
また,このことは無人操業化への妨げの一因ともなり,コスト削減における障害となっていることから解決が急がれていた。現在,関連企業がシステムの実用化を進めているという。
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