産総研ら,半導体の表面電場をテラヘルツで測定

産業技術総合研究所(産総研)とSCREENホールディングスは,大阪大学と,レーザー光の照射によりシリコン基板表面から発生するテラヘルツ波の波形を測定する技術と,コロナ放電によって表面電荷を制御する技術を組み合わせて,太陽電池の表面電場を計測する手法を開発した(ニュースリリース)。

結晶シリコン太陽電池は,シリコン基板と絶縁膜との界面での電場が設計通りでないと,光によってシリコン基板中にできる電子や正孔が界面で失われ,発電に寄与しなくなり変換効率が著しく低下するため,界面での電場の制御が欠かせない。

従来の表面電場の測定法は時間や手間がかかり,絶縁膜の誘電率や厚み,半導体のドープ濃度といった情報が必要,空間分布を測定するのに不向きなどの問題があった。そのため,半導体に絶縁膜を付けた状態の試料の表面電場を非破壊的に計測し,その空間分布を可視化できる技術の開発が求められていた。

レーザーテラヘルツ放射顕微鏡で半導体を観測すると,表面電場が強いほど強いテラヘルツ波の放射が観測され,また,電場の方向が逆になるとテラヘルツ波の波形は反転する。一般的に結晶シリコン基板上に形成された絶縁膜(シリコン酸化膜)中には正または負の電荷(固定電荷)があり,それによってシリコン基板と絶縁膜の界面に電場が形成されている。

今回開発した技術では,絶縁膜上にコロナ放電によりイオンを吹き付けた後,レーザーテラヘルツ放射顕微鏡でシリコン基板と絶縁膜の界面の電場を観測する。固定電荷と反対の符号のイオンを吹き付けると,固定電荷が打ち消されてテラヘルツ波の振幅が減っていく。固定電荷とイオンの電荷が釣り合うとテラヘルツ波の振幅は0になり,さらにイオンが増加するとテラヘルツ波の波形が反転し,振幅が増加していく。

今回,コロナ放電により吹き付ける負のイオンの量を変化させると,放射されるテラヘルツ波の振幅が変化し,さらに波形が反転する様子が初めて観測できた。テラヘルツ波の振幅が0となったときのコロナ放電によって吹き付けたイオンの電荷量(3×1011cm-2)が,試料の絶縁膜中の正の固定電荷の量となる。

今回開発した技術は,試料に電極などを付ける加工の必要がなく,絶縁膜の厚さや性質,半導体のドープ濃度に関わらず,固定電荷の量を非破壊・高空間分解能で定量的に測定できる。これは,例えば太陽電池の新しい表面パッシベーションプロセスを開発する際に重要な情報となる。また,太陽電池だけでなく,半導体表面上に絶縁膜を形成する各種デバイス(LSIやパワーデバイスなど)の界面電荷の測定法としても期待されるという。

今後,開発した技術を用いて,より変換効率の高い結晶シリコン太陽電池の開発を進めるとともに,半導体表面上に絶縁膜を形成する各種デバイスの固定電荷を測定する。また,レーザーテラヘルツ放射顕微鏡とコロナ放電装置とを組み合わせた固定電荷測定装置の実用化を目指すとしている。

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