京大ら,分子からなる超伝導体で90テスラを達成


京都大学,東北大学,東京大学らの研究グループは,米ロスアラモス 国立研究所,英リバプール大学らと共同で,分子からなる物質として最高の超伝導転移温度(Tc)をもつフラーレン(C60)化合物超伝導体が磁場に対して非常に頑丈であり,超伝導が壊れる磁場の上限値(上部臨界磁場(Hc2))が立方晶構造をもつ物質では最大の約90テスラにも上ることを発見した。さらにはこの大きなHc2が,分子の特性と固体の特性が拮抗した特殊な金属状態において,電子間の引力が強められるために現れることを明らかにした(ニュースリリース)。

超伝導は電気抵抗がゼロになる現象であり,消費電力を発生することなく電気を流すことが出来るので,安定かつ非常に強い磁場を発生させる磁石を作ることもでき,実際にMRI(磁気共鳴イメージング装置)にも利用されている。

しかしながら,ある大きさ以上の磁場を加えると超伝導状態は不安定になり,壊れてしまう。このような超伝導を破壊する磁場の上限である上部臨界磁場(Hc2)は超伝導を起こす電子のペア(クーパー対)の性質や,そのペアを組む電子の間に働く引力の強さとも密接に関係しており,Hc2と超伝導転移温度Tcの関係を明らかにすることは,基礎研究,応用研究,材料開発において急務とされている。

研究で着目したのは,炭素原子60個からなる分子いわゆるフラーレン(C60)を構成単位とする物質群のフラーレン化合物超伝導体であり,分子性物質のなかでは最高の転移温度38ケルビンを示す高温超伝導体として知られている。

さらには銅酸化物高温超伝導体と類似してモット絶縁体から超伝導体への相転移(モット絶縁体−超伝導体転移)を示すなど興味深い性質を示すが,その超伝導の発現メカニズムは長く謎に包まれており,特にHc2とTcの関係も明らかになっていなかった。

研究では,RbxCs3-xC60という組成の化合物を合成した。これにより,これまで高圧下でのみ観測されていたモット絶縁体−超伝導体転移を常圧で観測可能となり,詳細な実験的研究により高温超伝導が見られるモット絶縁体−超伝導体転移転換近傍での超伝導状態を調べることが可能となった。

また,米国ロスアラモス国立研究所強磁場施設で約62テスラまでの超強磁場中におけるラジオ波測定を行ない超伝導転移現象を調べることで,非常に大きなHc2まで決定可能となった。その結果,モット絶縁体−超伝導体転移近傍におけるHc2の決定に初めて成功し,最大で約90テスラ程度にまで達することがわかった。

超伝導磁石として現在最も普及している材料であり,フラーレン超伝導体と同じく立方晶構造を持つNb3Sn(Tc18ケルビン,Hc2約30テスラ)に比べて3倍程度と非常に大きく、立方晶構造をもつ超伝導体のなかで最大のHc2をもつことが明らかになった。また,モット絶縁体−超伝導体転移に近づくとともにペアを組む電子間の引力が強められ,それに伴ってHc2が大きくなることを突き止めた。

モット絶縁体−超伝導体転移近傍では分子の特性,電子間の強い反発力が拮抗した特殊な金属状態が実現しているが,そのような状況のなかで高いTcおよびHc2が実現しているという知見は,新しい分子性超伝導体の開発をさらに後押しするものになるとしている。

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