東京工業大学と農業・食品産業技術総合研究機構は共同で,大気圧低温プラズマを用いて植物細胞にタンパク質を導入することに成功した(ニュースリリース)。
二酸化炭素または窒素で生成した大気圧低温プラズマをタバコ葉に数秒照射した後,タンパク質を含む溶液に浸すと,タンパク質がタバコ葉の細胞内に入ることを確認した。シロイヌナズナの葉とイネの根の細胞にも同様の方法でタンパク質を導入した。
大気圧低温プラズマは室温~100 ℃程度の低温でありながら高い活性力を持つラジカルなどの活性種を生成できるため,表面親水化による接着力向上,細胞やウイルスの殺傷,血液凝固など様々な利用法が報告されている。
さらに,放電損傷を生じず,手で触れることができるダメージフリープラズマも生成可能なので,生体表面や生鮮食品などへの応用研究も進んでいる。
実験はダメージフリープラズマを,植物に適した温度にコントロールして照射した。このプラズマ源は,二酸化炭素,窒素,酸素,水素,空気,アルゴンなど様々なガス種を利用して大気圧プラズマを生成することができる。
この技術は植物体に特別な前処理をする必要がないので,前処理の問題からこれまでタンパク質導入が不可能であった植物種や組織にも広く利用できる。また,導入するタンパク質自体にも特別な処理が不必要なので,実際の栽培環境で使えるという。
今後はゲノム編集による品種改良,開花誘導タンパク質による開花コントロール,植物の機能コントロールなどへの展開が期待されるとしている。