岡山大,透明化により遺伝子発現制御を可視化


岡山大学は植物を丸ごと透明化するClearSee法を改良した「ePro-ClearSee法」を開発。透明化した植物組織内での遺伝子発現制御を可視化することに成功した(ニュースリリース)。

根や葉など器官は,形や性質は異なりますが同じゲノムDNAを持っている。植物の細胞は,さまざまな環境の変化に対応して,個別に遺伝子をオン/オフ(遺伝子発現制御)することで,必要な形質を獲得している。

遺伝子発現は,DNAやヒストンなどに“目印”として,メチル化やアセチル化などの化学的変化(エピジェネティック修飾)が起きることによって制御されているが,組織内のどの場所で遺伝子が発現しているかを知る方法はなかった。

2015年,植物を丸ごと透明化し,観察する「ClearSee法」が開発された。さらに,透明化後に抗体を用いて組織内のタンパク質を検出する方法がいくつか考案されたが,これらの抗体による染色方法は検出感度が低く,さらに長期の処理時間を要する必要があり,透明化した植物内でエピジェネティック修飾を観察することはできていなかった。

研究グループは,ClearSee法を改良し,抗体の細胞内への浸透効率を向上させた高感度抗体染色法の開発に取り組んだ。

研究では,ClearSee法に酵素処理による細胞壁の部分除去,プロパノールによる細胞膜の部分破壊のステップを加えることによって,組織内への抗体の浸透効率を向上させた「ePro-ClearSee法」を開発した。

この方法では,実験に用いた単子葉植物5種および双子葉植物4種全てで,透明化後の葉組織内でエピジェネティック修飾を観察できた。処理にかかる時間も10日~3週間程度と大幅に短くなった。

ePro-ClearSee法は,多くの植物種で利用可能であり,この方法がさまざまな植物の遺伝子発現制御ネットワークの解析やタンパク質の局在解析に利用されることが期待されるとしている。

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