九州大学と新日鐵住金の研究グループは,大型シンクロトロン放射光施設SPring-8での4D観察を活用し,自動車の鋼板などとして広く使われているハイテンの一種であるDP鋼の破壊メカニズムを解明した(ニュースリリース)。
DP鋼は,既に自動車用として使われているものの,その内部組織の複雑さにより,破壊のプロセスはよく分かっていなかった。研究グループがDP鋼の破壊過程を4D観察した結果,3次元的に複雑に絡み合う複雑な組織のうち,特定のサイトで遅れて生じた空隙がその後,急速に伸長して連結することで,鋼板自体の破壊が生じることがわかった。
この破壊メカニズムを考慮してDP鋼を設計することで,より強く,より成形性に優れた鋼板の作成が可能となることが期待されるという。また,DP鋼よりさらに複雑な組織,そしてさらに微細な組織を有する先進鉄鋼材料の評価や開発にも,一連の評価解析技術が有効になるものとしている。
また,SPring-8のビームラインBL20XUでは,被写体(ここでは鉄鋼)とカメラの間の距離が160mと世界最大の超高倍率X線CTの技術を構築しつつあり,これを利用すれば,今回研究したDP鋼よりさらに複雑な組織,そしてさらに微細な組織を有する先進鉄鋼材料の評価や開発にも,一連の評価解析技術が有効になるとしている。。