東北大,スピン流が生成する温度変化を可視化


東北大学は,スピン流によって生じる独特な温度分布を明らかにした(ニュースリリース)。

物質中には電流,熱流,スピン流などが存在する。これらの流れは相互に作用し,変換することができる。電流と熱流の相互作用は熱電効果と呼ばれ,熱から電気を作り出すゼーベック効果や,電気で加熱・冷却するペルチェ効果が知られている。

スピン流と熱流の間にも相互作用が存在し,熱からスピン流を生み出すスピンゼーベック効果や,スピン流で加熱・冷却するスピンペルチェ効果がある。スピン流と熱流の相互作用は新しい熱利用・熱制御の基礎現象として注目されており,スピン流に伴ってどのような温度分布が生じるのか明らかにすることが望まれていた。

研究では,スピンペルチェ効果によって生じた温度変化を熱画像として可視化することに初めて成功した。この結果により,スピンペルチェ効果に伴う温度変化は,スピン流のある領域付近のみに局在し,周囲に拡がらないことが見いだされた。

スピンペルチェ効果を観測するためには,金属薄膜中を流れる電流に由来するジュール熱による温度変化と,界面を流れるスピン流に由来する温度変化とを分離する必要がある。通常のサーモグラフィ法では,これら2つの温度変化の重ね合わせを測定してしまうため,スピンペルチェ効果による温度変化のみを純粋に測定することは不可能であると考えられてきた。

この問題を解決するために,今回,ロックイン・サーモグラフィ法と呼ばれる計測技術を利用した。これは,赤外線カメラを用いて,ある周波数で時間変化する温度分布だけを選択的に抽出して可視化する手法。

今回発見した振る舞いは,電流によって生じるジュール熱などによる温度変化が熱流を伴って拡がっていくこととは対照的なもの。スピンペルチェ効果に伴う独特な温度分布の発見は,スピン流によって局所的に温度を調整できる可能性を示すものであり,スピントロニクスに基づく新たな熱制御技術の発展に繋がることが期待されるとしている。

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