京大ら,逆ペロブスカイト酸化物で超伝導を発見


京都大学と名古屋大学らの研究グループは,マイナス金属イオンと酸素を含む化合物である「逆ペロブスカイト酸化物」において超伝導を発見した(ニュースリリース)。

「ペロブスカイト酸化物」は,ABO3(Oは酸素)という単純な組成式で表される。AやBとして実に多様な元素を使って合成が可能で,地球内部における主要な組成であるMgSiO3をはじめ,非常に一般的な物質群である。

酸化物で初めての超伝導が発見されたのも,このペロブスカイト酸化物だった。また,磁場をかけると電気抵抗が大きく変化する超巨大磁気抵抗物質など,数々の面白い性質を示す物質が存在する。

一方,その「鏡写し」といえる「逆ペロブスカイト酸化物」については,ほとんど研究されてこなかった。ここでいう「鏡写し」という比喩は,ペロブスカイト酸化物の中でイオンが帯びている電気の正負と,逆ペロブスカイト酸化物での正負が逆転しているという意味。

そこで研究グループは,逆ペロブスカイト酸化物の一つであるSr3-xSnOという物質を合成し,その超伝導を発見した。組成式の中の3-xは,Srの一部が不足していることを示している。この物質は空気中に取り出すとすぐに分解してしまうので,実験の多くはアルゴンガス中や真空中で行なった。

また,超伝導の特徴であるゼロ抵抗,磁束をはじこうとするマイスナー効果を観測した。これは逆ペロブスカイト酸化物で初めて発見された超伝導となる。さらに,逆ペロブスカイト酸化物には,トポロジーという性質がかかわっていると予言されている。

研究では,今回発見の超伝導体がトポロジカル超伝導体である可能性も理論解析に基づいて提案した。この成果を契機に,逆ペロブスカイト酸化物が注目され,他にも超伝導体があるのか,また他の面白い性質を示す物質があるのかなどを求めて,関連研究の加速が期待されるとしている。

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