昭和シェル石油は,太陽光エネルギーで水と二酸化炭素から有用物質を直接合成する研究開発において,ガス拡散電極(水と気体状態の二酸化炭素が同時に触媒に接触する構造の電極)を用い,常温常圧下において太陽光エネルギーだけで炭化水素などの有用な資源へ変換することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
現在,二酸化炭素の排出量を抑える方法として,再生可能エネルギーを利用し二酸化炭素を炭化水素などの資源へ変換する技術の実現が期待されているが,二酸化炭素は化学的に安定で炭化水素などに変換するのは難しい。
日本では近年,太陽光をエネルギー源とする人工光合成技術によって二酸化炭素を有用物質に変換する研究で世界を牽引しているが,多くの研究機関では二酸化炭素をいったん水に溶かした状態で変換する方式を採用しており,原料となる二酸化炭素が少量しか水に溶けないため,変換が難しいという課題がある。
同社は今回,燃料電池等で使用されているガス拡散電極を用い,気体の二酸化炭素を直接反応させることに成功した。二酸化炭素が反応する電極に独自に開発した触媒を使った「ガス拡散電極」を用い,「光陽極」には半導体光触媒とソーラーフロンティア製CIS薄膜太陽電池との積層構造を利用した電極を用いて,疑似太陽光の照射下,メタンを太陽光エネルギー変換効率60.61%,エチレンを同0.1%で合成することに成功した。
すなわち,炭化水素への太陽光エネルギー変換効率は0.71%となり,これは自然界の植物の光合成と同レベルとなる。この技術は気体の二酸化炭素を直接利用できるため,実用化に向けた大きな一歩になるとしている。
同社はこのガス拡散電極を用いた人工光合成の研究を進め,2030年までに二酸化炭素から高効率で炭化水素やアルコール等の有用物質を製造する技術を確立することで,二酸化炭素の再利用による持続可能な社会の実現を目指す。