大阪大学の研究グループは,暗視野X線タイコグラフィの実証に成功した(ニュースリリース)。
X線タイコグラフィは,厚い試料であっても高い空間分解能を発揮できるX線イメージング技術であり,現在,世界中の多くの放射光施設で盛んに研究開発が進められている。
X線タイコグラフィの空間分解能と感度を向上させるためには,試料からの回折強度パターンを極めて広い強度ダイナミックレンジで取得しなければならず,高輝度X線光源と高性能な二次元X線検出器が必要となる。
今回,研究グループは,微小構造体からの散乱X線を参照光とするインラインホログラフィとX線タイコグラフィを組み合わせることで回折強度パターンのダイナミックレンジを1000分の1程度圧縮する新手法「暗視野X線タイコグラフィ」を大型放射光施設おいて実証し,生物試料の高空間分解能イメージングに成功した。
具体的には,検出器として光子計数率の小さなCCD検出器を用いて30nmの厚さのタンタルで構成されるテス試料を11.5nmの空間分解能(ピクセルサイズ9.1nm),0.01ラジアンの位相分解能で観察することに成功した。
これは,硬X線を用いたX線タイコグラフィとしては世界最高水準の性能だという。また,生物試料として磁性細菌を観察した結果,細菌の外形ならびに内部に含まれる直径20~70nmの微小磁石が数珠状に並んだマグネトソームを可視化することにも成功した。
この成果によって,比較的安価である光子計数率の小さい二次元X線検出器を用いても,X線タイコグラフィによる高空間分解能・高感度イメージングが可能になり,この手法の普及が期待されるという。また,高性能な二次元X線検出器を駆使することで世界最高性能の空間分解能・感度の実現することが可能だとしている。