東京工業大学の研究グループは,発光体を1つの分子内に最大60個まで導入した新たな発光体の開発に成功した(ニュースリリース)。
発光分子はその機能化が求められている。例えば,光源を複数集めればその発光強度を制御できる。しかし,発光体の位置を制御できないと,強度を制御できないだけでなく,発光分子間の距離が近すぎる場合に生じる濃度消光も引き起こす。
これに対し,研究グループは中心部から段階的に精密に金属を配置できる独自開発したデンドリマーが利用できると考え,この精密デンドリマーに発光特性を持たせることを目的とした。さらにこのデンドリマーは剛直な骨格を持っており,分子内に1つずつ独立して発光分子を配置できるため濃度消光が抑制でき,発光強度が制御できると考えた。
このデンドリマーは金属を取り込める場所を予め設計したものであり,塩化ビスマスを中心部から順番に,決められた場所に結合させて作った。これにより濃度消光を抑え,増やした分だけ発光強度を高めることに成功した。構成要素であるビスマスの錯体は固体状態で濃度消光するのに対し,この発光デンドリマーは固体状態という極限の高濃度状態でも発光を保持した。
発光はデンドリマー内でビスマスの錯体を形成することで発現する。そのため,ビスマスとデンドリマーを自在に結合/切断することができる。この特性に基づき,ビスマス添加量の調整や酸化還元反応を駆使することで,発光強度の自在かつ可逆な制御を可能にした。
またこの可逆性にはデンドリマーのカプセル特性が寄与していることが分かった。カプセル特性は内部に取り込んだ物質を外部の物質から保護する効果であり,研究で利用したデンドリマーが取り込んだビスマスを外部から保護できることを見出した。
ビスマスイオンの集積による発光体は,新発光材のみならずセンサーとしても利用できるため,生体の重金属解毒防御機能(メタロチオネイン)などの解明に役立つという。
さらにこの集積手法は種々の発光分子に応用でき,ガラスやポリマーへ塗布することで高輝度発光材料が作成できる。特に魅力的なのは,微弱発光の分子に対しても集積させることで強度を補強できる点だとする。これは光センサーや光スイッチの新たな構築法として期待できるものだとしている。
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