富士キメラ総研は,テレビに代わりスマートフォン,スマートウォッチ・ヘルスケアバンド,HMD・スマートグラス,車載ディスプレー,パブリック・サイネージモニターなどが拡大をけん引するディスプレーデバイスの世界市場を調査し,その結果を報告書「2016 ディスプレー関連市場の現状と将来展望(上巻)」にまとめた(ニュースリリース)。
OLED市場は,2015年はTV,タブレット端末向けが市場の大半を占めた。TV向けは前年同様ハイエンド機種中心の出荷となった。出荷数量は全体の一割程度。一方,タブレット端末向けは引き続きSamsung El.のハイエンド機種に搭載され増加した。
2016年は,TV向けは増加するが,タブレット端末向けは減少する。Samsung Displayは好調な「GalaxyS6 edge」や「Galaxy」シリーズでの採用率の上昇に伴い,スマートフォン向け中小型AMOLEDの出荷を増加させており,タブレット端末向けの生産能力が不足しているという。
2015年からはパブリック向け,2016年にはノートPC向けの出荷が開始され,将来的にはPCモニター向けも計画されるなど,今後出荷数量の増加が期待される。各社とも用途拡大を進めてはいるものの,LCDとの競合から,コストダウン,歩留まりの低下が最優先課題だとしている。
中小型AMOLEDは大型AMOLED以外とした。先行したSamsung Displayが自グループのSamsung El.のスマートフォンを中心に出荷を伸ばし,市場拡大をけん引してきた。同社は2015年にパネル外販を強化し,中国スマートフォンメーカーを中心に採用を獲得した。特に,2015年から2016年かけてOPPO,vivoなどのAMOLED搭載機種が好調であったことや,Appleが搭載機種開発の方針を打ち出したことから,中国スマートフォンメーカーの間でAMOLED搭載に対する関心度が高まっているという。
また,2015年は「Apple Watch」が投入され,スマートウォッチ市場が本格化したことも市場の拡大の要因となった。AMOLED搭載のスマートウォッチは「Apple Watch」と「Galaxy Gear」シリーズがあり,ともにプラスチック基板を採用している。このうち「Galaxy Gear Fit2」ではフィルムセンサーと組み合わせることで,湾曲ディスプレーを実現している。
2016年は,スマートフォン向けは採用率の上昇,「Galaxy」シリーズの販売復調などを背景に,出荷数量の増加が続くとみる。スマートウォッチ向けについても,前年ほどのインパクトはないものの,「Apple Watch」の販売増に伴い,出荷数量が増加するとみる。
今後は2017年後半にAppleへ供給が開始され,2018年には「iPhone」のフラッグシップモデルに搭載されるとみられることや,Samsung Display以外のパネルメーカーで生産技術の確立,量産が進むことから,市場は拡大が続くと予想する。
LCDについては,2015年はPCモニター,ノートPC,タブレット端末向けの出荷が低迷し,市場は数量ベースで前年比縮小となったが,金額ベースでは円安の影響で拡大となった。
2016年はTV向けがセット需要の頭打ちと,2015年後半に実需を上回る数量が出荷された反動で,出荷数量が減少に転じるとする。PCモニターやノートPC向け出荷数量も引き続き減少するほか,タブレット端末向けはスマートフォンの大型化に起因するセット需要の減少が進行しており,大幅な減少となるという。従って,市場は数量ベースで前年比縮小,金額ベースではTV向けの大型サイズや4Kパネルの低価格化に加えて円高の影響もあり,さらに大きな縮小を見込む。
2017年以降,TV向け出荷数量は微増するが,PCモニター向け,ノートPC向けは微減,タブレット端末向けも漸減するという。パブリックモニター向けは好調が続くが,大型TFT全体として市場は数量,金額ベースともにわずかな縮小が続くと予想する。
中小型TFTは,フィーチャーフォン,DSC,MP3プレーヤー向けなどが減少する中,ここ数年はスマートフォン向けが市場拡大をけん引してきた。しかし,2015年は在庫増大による生産調整のほか,AMOLEDの採用拡大の影響もあり,スマートフォン向けの出荷数量は低調な伸びにとどまった。その結果,他用途向けのマイナスを補うことができず,市場は数量ベースで縮小となったという。
2016年はセット需要が低迷しているほか,AMOLED採用の勢いが増しており,スマートフォン向けの出荷数量は減少に転じるとする。車載ディスプレー向け,スマートウォッチ向けの出荷は好調が続いているが,市場は引き続き前年割れが見込む。今後は車載ディスプレー向けで安定した出荷拡大が続くが,スマートフォン向けは横ばい,他用途向けの多くは減少し,市場は数量,金額ベースともに縮小が続くとみる。
電子ペーパーは電気泳動方式(マイクロカプセル・マイクロカップ型)の電子ペーパーを対象とした。2015年の市場は数量ベースでわずかに拡大したが,金額ベースでは価格の下落,為替変動の影響で縮小したという。用途別では2014年に続き電子棚札向けが数量ベースの半数以上を占めた。
電子ペーパーは薄さ,軽さ,電源を切っても表示が維持される機能,低消費電力,反射光表示,視野角の広さ,一定のフレキシブル性など,液晶にはない長所をいかしてさまざまなアプリケーションへの提案が行なわれている。用途は物流タグ,旅行タグ,椅子など家具,楽器などへの組み込みなどと広がっており,市場は数量ベースでは拡大するとみる。
一方,金額ベースでは用途が広がり単価が下落しているため当面縮小するが,出荷数量の増加とともに,次第にプラスに転じると予想する。電子書籍リーダー向けは普及が一段落していることから出荷数量は横ばいとみらる。主にクレジットカードなどのICカード,物流タグ,航空用手荷物ラベル用途などで需要拡大が期待できるとする。