北大,分極自在な有機強誘電体を開発

北海道大学の研究グループは,球状有機分子が回転している柔らかい分子性結晶が,強誘電体となることを世界で初めて発見した(ニュースリリース)。

近年,無毒,柔軟性,高い加工性などの有機分子性結晶の強誘電体の利点が注目され,非常に高い性能をもつ分子性強誘電体が開発されている。

しかし,実際に強誘電性結晶を材料として利用する際には,材料内の多数の微結晶粒子のそれぞれの分極の向きを,電圧の向きにそろえる必要があり,セラミックス強誘電体では可能なこの分極処理は,結晶構造の対称性が低い分子性結晶では通常不可能だった。

今回,柔粘性結晶とよばれる物質群に注目して強誘電体を開発した。現在広く用いられているセラミックス強誘電体とは異なり,溶液加工と柔軟に変形する展延性を利用した薄膜形成ができる。

この強誘電体は電場の方位を変えることで強誘電体の分極方向を3次元的に自由に変更できる。このような分極処理はこれまで分子性結晶の強誘電体では出来なかった。

この新しいタイプの有機強誘電体は,従来の強誘電体物質群の長所を兼ね備えており,フレキシブルな形状と加工性からエレクトロニクス素子などへの広い応用が期待されるとしている。

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