日機装,深紫外線LED水殺菌モジュールを開発

日機装は,LED一個当たりの殺菌能力を同社従来比で2.5倍から3倍へと飛躍的に高めることで,産業向けにも適した大容量流水殺菌モジュールを開発した(ニュースリリース)。

新たに開発したモジュールは,複数の深紫外線LEDを二次元的に並べることで(アレイ化)殺菌能力を最大化しながら,近傍に集光型のリフレクター(反射鏡)を配置して,光の利用効率を高めたもの。

その結果,水殺菌における性能の指標となる大腸菌は,ワンパスで,毎分120リットル以上の殺菌能力を確認することができた。また,塩素などの薬剤では死滅させることができないクリプトスポリジウムに対しては,毎分60リットルの流量で十分な殺菌ができることも確認した。

今回開発したモジュールには,19個の紫外線LEDを使用した。使用するLEDの個数を100個から1,000個へ増やすことで,ビルや工場での水処理,上水施設での水殺菌など,用途に応じて毎分1,000リットルから5,000リットルの処理設備に使用することができるようになるという。

同社は,これまでにも同様の深紫外線LEDを搭載した流水殺菌モジュールを製品化しているが,ワンパスでの処理能力は毎分2リットルおよび毎分10リットルの小流量にしか対応していなかった。

同社の流水殺菌モジュールは,流れる水の方向とLEDから放射される光の方向が同じ方向を向いている。これにより,周辺の反射を利用して,断面内での光強度を均一化し,殺菌能力のムラを抑えている。多数個の LED を用いた場合でも、面内の光の均一性が保たれるようにLEDの配置を設計することで,殺菌能力を最大化している。

また,LEDから放射される光は,非常に広い角度(半値全角:120度)に広がっている。同社では,これらの光を殺菌リアクタ周辺に反射材を形成して面内均一性を高めているが,よい反射材を用いても紫外線の反射率は低く,何回かの反射で光は弱まってしまう。

これを改善するために,LEDの近傍に集光型のリフレクターを形成することで,見かけ上LEDの放射角度を狭くし,殺菌リアクタ内での均一性を損なうことなく,かつ,周辺反射での光損失を低減した。これにより,LEDからの光を有効に殺菌作用に使うことが可能となり,性能向上に寄与させることができた。

同社は今回の技術開発成果について,紫外線LEDの応用範囲を飛躍的に拡大するものであり,従来から想定されていた,サイズの問題からランプ式紫外線殺菌装置の搭載が困難であった様々な機器への組み込みを進展させるだけでなく,工業・産業向けのLED応用を拡大するものだとし,今後,開発技術を具体的な製品に盛り込み,各種用途に幅広く提供していく予定。

なお,今回開発した水殺菌モジュールには,現在同社が量産している深紫外線LED(VPS171)を使用しているが,LEDチップを高出力化することで,更に高い殺菌性能の実装が可能となる。同社は,引き続き深紫外線 LEDの開発を推進し,長寿命且つ高光出力の深紫外線LEDを提供するとしている。