東京工業大学は電気通信大学と共同で,発光酵素ホタルルシフェラーゼ(以下,F-Luc)の基質の開発を行ない,体内深部からの発光シグナルを感度良く観察することができる近赤外光を産生する実用的な基質Aka-HClの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
F-Lucを用いた発光イメージングは,世界標準の光イメージング技術で,小動物を用いた創薬研究には不可欠な技術となっている。しかし,自然界に存在するF-Lucの発光基質D-ルシフェリン(以下,D-luci)は,組織透過性が乏しい可視光領域の光を産生するため,これまで体内深部の観察には限界があった。
また,これまでに開発された近赤外発光を産生する基質は,産生する光が極端に弱かったり,水溶性が乏しく生体に応用できなかったり,F-Lucの変異体にしか反応しなかったりして,実用的ではなかった。
今回研究グループは,F-Lucと反応して,近赤外領域に発光のピークを示すD-luciの誘導体を電通大で合成し,それらの生体イメージングでの有用性を,F-Lucを発現するがん細胞を移植した腫瘍モデルマウスを用いて,東工大で評価することで,効率よく目的の基質開発に繋げることができた。
今回開発した基質Aka-HClは,水溶性にも優れ,マウスを用いた実験でD-luciよりも最大40倍高い検出感度を示し,近赤外光を産生できる世界初の実用的な基質であることがわかった。さらに,既存のF-Lucの遺伝子改変マウスや遺伝子導入細胞を用いた実験系に広く応用できる。
これまでよりも高い感度で体内深部の観察を可能にするため,広範な研究分野で,研究の推進に貢献できると期待されるとしている。なお,今回開発した基質Aka-HClは,「TokeOni (808350-5MG)」という名称で米Sigma-Aldrichより販売されている。
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