京大,MUレーダーで波長以下の宇宙ごみを観測

京都大学の研究グループは,大気観測用のMUレーダーを用いた宇宙ごみ(スペースデブリ)の観測に成功した(ニュースリリース)。

1957年に人類最初の人工衛星が打ち上げられて以降,数多くの人工衛星が打ち上げられてきた。これらの打ち上げに使用されたロケットの上段ステージや役割を終えた人工衛星などの機能を持たない人工天体はスペースデブリと呼ばれており,現在は,10cm以上のデブリ2万個以上が確認されている。その飛行速度は秒速8km程度あり,わずか数cm程度の大きさでも運用中の国際宇宙ステーション,人工衛星などに大きな被害を引き起こす。

また,近年,デブリ同士の衝突によりデブリの総数が劇的に増加した事例があり,スペースデブリが連鎖的に自己増殖し続けるケスラーシンドロームと呼ばれる現象の発生が懸念されている。

今後,持続的な宇宙開発利用を進めるに当たり,スペースデブリ発生の抑制や除去,人工衛星等への接近や衝突の予測等,宇宙空間における環境への配慮が不可欠となっている。そのため,世界中の機関によって,地上に配置された光学望遠鏡やレーダー観測装置によって,定常的にデブリ観測が行なわれている。

研究グループは,高度数百kmの地球周回軌道上にあるスペースデブリのうち,レーダー観測装置の波長と比較して,大きさが同程度以下のスペースデブリのサイズ,スピン,概形等の状態の推定をする観測手法を提案し,大型大気レーダーである京都大学生存圏研究所MUレーダー(周波数46.5MHz,波長6.45m)を用いて,実際の観測に成功した。

また,京都MUレーダ以外の様々なレーダー観測装置に,この手法を適用することで,デブリの総合的な観測能力を向上することが期待できる。さらに研究グループは,地上のレーダー観測装置によるスペースデブリの状態推定の精度向上,および,軌道推定の精度向上を目指す。

また,人工衛星に搭載した光学望遠鏡による軌道上からのスペースデブリの観測の可能性について検討する。さらに,10cm以下の微小スペースデブリの軌道分布モデルの構築,スペースデブリの除去戦略や除去手法の研究を推進するとしている。

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