富士フイルム,タッチパネルフィルムで日化協技術賞受賞

富士フイルムは,「写真技術を応用した,タッチパネル用薄型両面センサーフィルムの開発」で,一般社団法人 日本化学工業協会の第48回(平成27年度)日化協技術賞 技術特別賞を受賞した(ニュースリリース)。

日化協技術賞は,化学技術の開発や工業化によって化学産業ならびに経済社会の発展に寄与した事業者を表彰する制度。技術特別賞は,独創的で,かつ科学技術の進歩に寄与した製品や技術に関して授与される。

現在,タッチパネル用センサーフィルムは,ITOを使ったものが一般的に用いられているが,ITOは抵抗値が高いため応答性が悪く,10インチを超えるような大画面サイズや,ペン入力やマルチタッチ入力などへの対応が困難といった課題があった。

さらにITOは原料のインジウムが希少金属で安定供給に不安があることや,インジウム化合物が特定化学物質に指定されているため環境リスクがあること,折り曲げ時に断線して抵抗値が上昇しやすいことなどがあり,代替となる材料が求められていた。

今回の受賞は,タッチパネル用薄型両面センサーフィルム(製品名:「エクスクリア」)の開発に関するもの。この製品は,同社が写真フィルムなどの開発で培った銀塩写真技術を活用している。写真の現像プロセスを応用して作製した現像銀に導電性を付与することで低抵抗を実現し,大画面サイズ,ペン入力やマルチタッチ入力への対応を可能としている。

また,透明なPETフィルム上に,特定の可視光を反射しないマット感のある黒色調を持つ現像銀で微細なセンサーパターンを形成することで,高い透明性と屈曲性の両立も可能にしている。

この製品は,タッチパネル市場,特に10インチ以上のタッチパネルセンサーとして注目され,複数のメーカーに採用されている。両面にセンサーと周辺配線を同時に形成することによるモジュールプロセス簡略化,インジウムを使用しないことによる安定供給の実現や環境負荷低減にも貢献している。さらに,高い屈曲性を活かし,3D,ウエアラブルデバイスなどのセンサーへの応用展開も期待されているという。