富士通,レーザーによる体操判定技術を開発へ

日本体操協会と富士通および富士通研究所は,富士通研究所が開発した3Dレーザーセンサーと3Dデータ処理技術(骨格・技認識技術)と,日本体操協会が持つ技の認識に関するノウハウを融合し,体操競技における採点支援技術の共同研究を行なうことに合意した(ニュースリリース)。

採点スポーツである体操の技術進歩は非常に速く,ひねりの回数など,目視では正確な判定や採点を行なうことが困難な場合も出てきている。そのため,目視による判定に加え,ICTを活用して競技者の動作をセンシングし,数値データとして分析できるようにすることで,より正確な判定を支援することが可能になる。

現在,人間の動作分析にはモーションキャプチャー技術が主に利用されているが,競技者に多数のマーカーを装着する必要があるため,実際の競技では利用することができなかった。今回,3Dレーザーセンサーによって人間の動きを立体的かつ高精度に捉え,取得した3Dデータから人間の骨格や実施された技を認識することで,競技の判定に必要な数値データを導き出し,審判の採点を支援する技術の実現を目指す。

具体的には今後,富士通研究所が開発した3Dレーザーセンサーや3Dデータ処理技術などを活用して,日本体操協会の登録者などの競技データを取得するとともに,日本体操協会が持つ技の認識や審判の採点に関するノウハウなどを収集し,審判の採点を支援する技術の研究や実証を共同で行なう。

従来の3Dレーザーセンサーでは距離や動きに応じて画角を制御することができなかったため,遠距離で利用すると解像度が低くなり,スポーツへの適用は難しいという課題があった。今回,富士通研究所は,MEMSの高度な制御技術を用いて,距離に応じて画角を自動調整し,遠距離でも解像度を維持する技術を開発した。

また,骨格認識技術では,大量なデータを基に機械学習したモデルを使うことで骨格を高速に認識する従来方式に加えて,3Dデータに対して人体の最適な骨格形状を当てはめる新たな方式を組み合わせることで,高速・高精度な認識技術を開発した。

この技術の実現により,複雑化,高度化する体操競技における審判員の負担軽減に加え,試合における採点時間の短縮にも寄与し,競技者や観戦者などにとってもメリットが期待される。また,この技術を試合観戦やトレーニングに適用することで,体操などの採点競技以外のスポーツでの活用も想定する。

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