島津,燃料電池内リアルタイム酸素濃度モニターを発売

島津製作所は,燃料電池自動車を始めとする自動車分野などへの応用や家庭用燃料電池「エネファーム」として普及が期待される固体高分子形燃料電池(PEFC)内の酸素濃度をリアルタイムで測定できる「FC-3Dモニタ FCM-3D-Oxy」を5月23日に発売する(ニュースリリース)。価格は3,000万円(ソフトウェア込み,税別)

燃料電池自動車や家庭用燃料電池などが普及すると予想される中,燃料電池メーカーや部材メーカーは,エネルギー効率の向上やコストダウンなどに関する研究開発を進めており,燃料電池内部で反応する酸素と水素の状態や,反応によって消費される気体濃度の経時変化を直接評価したいというニーズがある。

同社は,平成17~19年度に参画したNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトの成果を通じて,PEFC内GDLの表面や気体流路の酸素濃度を測定し可視化する装置「FC-O2モニタ」を2009年に世界に先駆けて発売したが,運転中の燃料電池内部の酸素濃度を深さ方向に把握する装置はこれまでに無く,シミュレーションに頼らざるを得なかった。

そこで,山梨大学をプロジェクトリーダーとするJSTプロジェクトにおいて,酸素と感応する蛍光試薬を塗布したプローブをGDLに直接挿入し,光学技術によって得た蛍光強度から深さ方向の酸素濃度をリアルタイムで測定する技術を開発し,同社が世界で初めて製品として実用化した。

直径50μmの微細なプローブをPEFC内部に直接挿入する技術によって,GDL内の任意の位置・深さごとの酸素濃度をモニターできる。プローブは本体に5セット搭載しており,最大で5箇所までの同時測定が可能。また,プローブの先端位置を自動で算出する機能も搭載しており,酸素濃度の経時変化や,測定場所ごとの酸素濃度の記録も可能できる。

また,従来製品のソフトウェアを応用し,深さ方向に測定する本製品用のソフトウェアを新開発した。高速なデータ処理によって,5箇所同時測定時でもリアルタイムで酸素濃度とプローブの先端位置を記録することができる。

従来製品は装置が制御部と本体部に分かれており,暗室で使用する必要があったが,新製品は,制御部と本体部を一体化して設置面積1m×1mの単一ユニットに収めており,暗室の用意も不要となり,現場に導入しやすくなっている。

この製品により,GDL内部の酸素濃度を測定することで,発電効率を高める部材の設計および選定や気体流路の最適化への寄与が期待できるとしている。