いぶき,CO2濃度が400ppmを超えたことを確認

環境省,国立環境研究所(NIES)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット))を用いて二酸化炭素やメタンの観測を行なっている。「地球大気全体(全大気)」の月別二酸化炭素平均濃度について,平成28年1月までの暫定的な解析を行なったところ,平成27年12月に月別平均濃度が初めて400ppmを超過し,400.2ppmを記録したことがわかった(ニュースリリース)。

世界気象機関(WMO)などいくつかの気象機関による地上観測点に基づく全球大気の月平均値では,二酸化炭素濃度はすでに400ppmを超えていたが,地表面から大気上端(上空約70km)までの大気中の二酸化炭素の総量を観測できる「いぶき」のデータに基づいた「全大気」の月平均濃度が400ppmを超えたことが確認されたのはこれが初めて。これにより,地表面だけでなく地球大気全体で温室効果ガスの濃度上昇が続いていることがわかった。

また,推定経年平均濃度は平成28年1月時点で399.6ppmだったが,このままの上昇傾向が続いたと仮定すれば,平成28年3月頃には400ppmを超えた可能性がある。これにより,現在の地球大気の二酸化炭素濃度は実質的に400ppm台に突入していると考えられるという。

「いぶき」は,JAXAと環境省,国立環境研究所が,共同プロジェクトで開発した人工衛星で,地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを宇宙から測定する。温室効果ガス観測センサー(TANSO-FTS)と,雲・エアロゾルセンサー(TANSO-CAI)を搭載する。

FTSは,フーリエ干渉によって,波長別の光の強度分布(スペクトル)を得る。具体的には,地表面により反射された太陽光と,地球大気や地表面から放射される光のスペクトルを観測する。

CAIは,大気と地表面の状態を昼間に画像として観測する。観測データから,FTSの視野を含む広い範囲での雲の有無を判定し,エアロゾルや雲がある場合はその雲の特性やエアロゾルの量などを算出する。

今後,引き続き「いぶき」観測データに基づく成果の公表を行なうとともに,平成29年度をめどに打上げを予定している「いぶき後継機(GOSAT-2)」を用いて継続的な温室効果ガス観測を実施し,それらの成果を地球温暖化予測の精緻化に反映させていく予定。

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