国土地理院,1mm精度の宇宙測地観測を開始

国土地理院は,世界最高水準の1mmの精度で地球上の正確な位置を決定するため,地盤の安定した茨城県石岡市に最先端の観測施設(石岡測地観測局)をアジアで初めて整備し,平成28年5月1日に本格運用を開始しする(ニュースリリース)。この観測によって,測量や人工衛星の軌道決定に精度向上が期待できる。

石岡測地観測局は,VLBI(超長基線干渉計)観測施設,GNSS(全地球航法衛星システム)観測点,重力測定室などを備えている。これらの様々な測地技術を組み合わせてプレート運動や地球回転などの地球規模の変動を監視するとともに,国際標準に準拠した我が国の位置の基準を提供する。

VLBI観測施設では,アジアで初めて最先端のVLBIを導入しており,これまでの国土地理院のつくばの施設をはるかに超える性能を有している。はるか彼方にある天体から地球に届く電波を巨大なパラボラアンテナで受信して地球上の数千km離れたアンテナ間の距離を,わずか1mmの誤差で測ることができる。

また,世界各国が国際連携のもとで行う共同観測に基づいて日本の地球上での正確な位置(緯度・経度)を決定し,日本の全ての位置の測定の基準となる。プレート運動など地球の動きを監視することで,常に正確な位置を求めることができる。

平成23年東北地方太平洋沖地震では,地面が広い範囲で大きく動いたが,VLBIで変動を迅速に把握したことで,地震後の日本の正確な位置が定まり,復旧・復興に不可欠なGNSSなどによる迅速な測量が可能となった。さらに,地球の回転の変化など地球の運動を正確に測定することで,国際的な時刻の管理に必要となる「うるう秒」の挿入決定にも利用される。

また,GNSS観測点を併設することで,国内のどこでも効率的に正確な位置の測定が行なえる。国際的な観測に参加することで,数多くのGNSS観測点で地球の動きが把握できることから,さらに詳細な地球の形の把握ができるようになる。こうして求めた地球の形からVLBIと共に国際標準となる正確な位置の基準(測地基準座標系)の構築に貢献するとしている。

石岡測地観測局は,筑波山の安定した地盤に位置するため,安定した重力測定が行なえる。施設には,重力測定を行なうための重力測定室を設けている。重力(重力加速度)を正確に測ることで,高さ(標高)の基準となる基準面(ジオイド)の正確な形を定め,高さの基準を構築する。重力測定室では,国際標準に適合する重力計の比較観測を行なって重力計同士が同じ値を正確に示すことを確認する。

国土地理院では,平成10年度に茨城県つくば市に直径32mのパラボラアンテナを建築し運用してきたが,平成28年末に18年間の歴史を終えて,解体撤去する予定。