ここ数年,3Dプリンティング技術(Additive Manufacturing:AM技術)が脚光を浴び,これまでの試作用途からマスカスタマイゼーションを志向する実生産への導入機運が高まっている。
こうした中にあっても,3Dプリンティング技術の進展は続いており,より高精度で精密・微細、さらに機能性ある3D造形の実現に向け,プロセス技術から材料開発など様々なアプローチから研究・開発が行なわれている。
国内では3Dプリンティング技術に関し,内閣府が推進する戦略的イノベーションプログラム(SIP)の中で革新的設計生産技術「超3D造形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出」や「Additive Manufacturingを核とした新しいものづくり創出の研究開発」,それに経産省の委託事業「次世代型産業用3Dプリンターの開発(実施主体:TRAFAM)」などのプロジェクトが推進されている。また,3Dプリンティング技術に通じるものとしては阪大を中心とするSIPの「高付加価値設計製造を実現するレーザーコーティング技術研究開発」もある。
こうしたプロジェクトで既に成果が上っており,3Dプリンティング技術の産業応用への期待が高まっている。3Dプリンティング技術の産業化に向けては出口の明確な設定が必要とも言われており,実際に使用する側となるエンドユーザーを巻き込んだ開発が重要性を増す。
3Dプリンティング技術は光源開発とともに,材料,造形プロセスの開発サイクルを展開させ,さらにエンドユーザーの評価をもって市場形成へとつながっていくものと考えられている。今回,月刊OPTRONICS 5月号(5月10日刊行)では、「レーザー光を用いた超精密・超微細3Dプリンティングの最前線」と題する特集を企画している。
これと連動し、2016年5月18日~20日の3日間、パシフィコ横浜において開催されるOPTICS&PHOTONICS International Exhibition(OPIE’16)の会期初日の5月18日(水)に展示会OPIE’16&月刊オプトロニクス連動特別講演会を開催。金属,セラミックス,樹脂,ガラス,ナノコンポジット樹脂など多種多様な材料を用いた超精密・超微細を可能にする3Dプリンティング技術を,世界の市場動向を交えながらキーパーソンの方々が解説する。
展示会OPIE’16&月刊オプトロニクス 連動特別講演会
『レーザー光を用いた超精密・超微細3Dプリンティングの最前線』
https://www.opie.jp/seminar/projects/semi/1/10#seminar_id_30
日時:2016年5月18日(水) 9:30~16:15
会場:パシフィコ横浜 アネックスホール F203
〒220-0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1
http://www.pacifico.co.jp/promoter/facilities/annex/
主催:超3D造形ものづくりネットワーク/月刊OPTRONICS
後援:横浜企業経営支援財団(予定)
定員:90名(定員になり次第締め切ります。)
【プログラム・講演概要】
◆総論
丸尾昭二先生(横浜国立大学)
本講演会の趣旨,レーザー光を用いた超精密・超微細3Dプリンティング技術の動向と今後を展望する。
◆金属レーザー積層造形の最新動向
京極秀樹先生(近畿大学)
我が国のAM装置開発と導入の状況,大型AM装置を中心とする開発トレンドについて述べるとともに,金属レーザー造形技術の動向からTRAFAMで開発中の産業用3Dプリンターについて解説する。
◆光造形法によるセラミックスの高精細三次元積層造形の最新動向
萩原恒夫先生(ネクストラボラトリー)
光造形法を中心に検討が進んでいるセラミックスの高精細三次元積層造形について,その現状と動向について述べるとともに,参入企業の装置に見る開発事例を解説する。
◆フェムト秒レーザーを用いた2光子造形による超微細3D造形と応用
丸尾昭二先生(横浜国立大学)
近赤外フェムト秒レーザー光による2光子吸収により,光硬化性樹脂の内部を選択的に硬化させて造形する技術とともに,光ファイバーによるレーザー伝送造形法を解説。SIPで取り組んでいる「超3D造形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出」の開発状況も述べる。
◆フェムト秒レーザーを用いた除去/付加複合3次元加工と応用
杉岡幸次先生(理化学研究所)
フェムト秒レーザー3次元加工は除去加工,無変形加工, 付加加工の3つに分類されるが,それぞれの加工法には一長一短がある。そこで,それぞれの加工法の弱点を補いつつ特長を融合することにより,より複雑かつ高機能な構造を実現するフェムト秒レーザー3次元複合加工技術とその応用を解説する。
◆カーボンナノチューブ含有樹脂を用いた2光子造形法
庄司 暁先生(電気通信大学)
カーボンナノチューブ含有樹脂を用いていかにして2光子造形法を可能にするか,キーとなるカーボンナノチューブの光学特性と,2光子造形法に応用するための条件について解説するとともに,最新の2光子造形法の研究成果とナノスケールの樹脂材料が有する力学特性についての新しい知見を紹介する。
◆金属酸化物ナノ微粒子を用いたフェムト秒レーザー還元直接描画法
溝尻瑞枝先生(名古屋大学)
微細金属構造を大気中で造形する手法として,フェムト秒レーザー還元直接描画法について紹介。フェムト秒レーザー照射条件を制御して金属酸化物ナノ粒子の還元度を制御した研究例として,CuOナノ粒子原料粉末の還元によるCu-rich及びCu2O-richの微細金属構造の選択的な形成について報告するとともに,これらの選択的描画法を用いて作製したCu2O/Cu複合構造からなるマイクロ温度センサや,合金パターニングへの応用について解説する。
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