東工大ら,紙おむつからカルシウムセンサーを作製

東京工業大学と東京大学,奈良県立医科大学は共同で,細胞外の高濃度のカルシウムイオンの濃度変化を捉えるゲル状のカルシウムセンサーを開発することに成功した(ニュースリリース)。

近年,生体内で様々な機能を果たしている細胞外のカルシウムイオンの濃度変化を可視化できる蛍光カルシウムセンサーの開発が望まれている。しかし,細胞内で用いる従来の水溶性の蛍光カルシウムセンサーは水溶性で細胞外領域では観察点から流れ出してしまうため,根本的に異なるシステムを開発する必要があった。

研究グループでは,生体内の細胞外カルシウムセンサータンパク質(CaSR)の「カルボン酸の連続構造」をヒントに,類似の構造を有する汎用合成ポリマーであるポリアクリル酸に注目した。ポリアクリル酸は紙おむつの吸水剤として利用されており,年間約 2百万トン生産される汎用ポリマー。

凝集状態で蛍光性を発現する誘起発光色素と呼ばれる特殊な色素を数%,ポリマー鎖に取り付けたところ,このポリマーは細胞外濃度に相当する高濃度のカルシウムイオン存在下で大きく発光性を変化させること見出した。

さらに,誘起発光色素の導入量を1%ずつ変化させるだけで検出可能なカルシウム濃度領域を連続的に変化させることも可能であり,様々なカルシウム濃度条件に適応可能であることも見出し,細胞外で起こるカルシウム濃度変化の検出に適したセンサーとして機能することを見出した。

このセンサーは様々な形状に成形加工でき,安価で大量生産も可能であることから,今後,情報伝達物質として注目されている細胞外カルシウムの機能解明に関する研究だけでなく,食品や環境中のカルシウムイオン濃度検査などへの応用も期待されるとしている。

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