産総研と名大,「橋渡し」推進GaN研究組織を設置

産業技術総合研究所(産総研)は,平成28年4月1日に「産総研・名大 窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ」(GaN-OIL)を名古屋大学と共同で設立した(ニュースリリース)。

産総研におけるオープンイノベーションラボラトリ(OIL)は,平成27年度から始まった産総研の第4期中長期計画で掲げている「橋渡し」を推進していくための新たな研究組織の形態で,GaN-OILがその第一号となる。

エネルギー問題解決や高度情報化社会の実現には,半導体機器が省エネルギー性に優れ,高速に動作することが重要。その中で,従来よりも高性能な半導体の素材として注目されるガリウム(Ga)系の窒化物を使った半導体技術の開発とその発展は,グリーンイノベーションの達成に大きな役割を担うと考えられている。

GaN-OILでは,産学官ネットワークの構築による「橋渡し」につながる目的基礎研究の強化,窒化物半導体技術の産業化・実用化のために必要な結晶技術,デバイス技術,回路技術などの開発を行なう。具体的には,窒化物半導体を用いたパワーデバイス技術の開発および窒化物半導体を用いた発光デバイス技術の開発を行なう。

窒化物半導体を用いた発光デバイス技術の開発においては,GaN高指向性・高輝度LEDの研究,インジウム(In)含有量の多いInGaN結晶成長による発光波長制御技術の開発に焦点を当てて進めていく。

GaN高指向性マイクロLEDは,光の方向を集中させることができるためエネルギー効率がよく,次世代の携帯型・ウェアラブル型情報機器用の低消費電力ディスプレイや高耐温・高速光通信用モジュールへの活用が期待されている。しかし,安定した指向性を実現する技術は未だ確立されておらず期待される省電力性能は実現されていない。

そこでGaN-OILでは,産総研が提案する独自の指向性制御技術をもとに,GaN/InGaNの結晶成長技術で世界最高水準の実績を持つ名古屋大と連携し,GaN系高指向性LEDの開発と実用化を推進する。

また,真空状態を必要としない準大気圧プラズマ源搭載MO-CVD(有機金属化学気相成長法)によるIn含有量の多いInGaNの結晶成長技術を確立すれば,窒化物半導体によるフルカラー発光デバイスの実現や,全く新しい機能を有する電子デバイスなどの研究開発にもインパクトを与えることが予想されるという。

GaN-OILでは,窒化物半導体の結晶成長など基礎物性に関する高い研究ポテンシャルをもつ名古屋大とクロスアポイントメント制度などを活用して,窒化物半導体デバイス開発のための技術シーズのくみ上げと人材連携を行ない,産業界への「橋渡し」研究を進めていく。

また,NEDOプロジェクトなどを通じて国内企業と共同研究を行ない,より実用化に近い技術開発を進め,GaNデバイスに関する研究開発を推進していくとしている。