田中貴金属ら,低温接合材料による高出力LEDを開発

田中貴金属工業とS.E.Iは,サブミクロンサイズの金粒子を用いた低温接合材料「AuRoFUSETM」(オーロフューズ)を使用し,従来品よりも高い出力に対応可能なLED(発光ダイオード)モジュールを開発した(ニュースリリース)。

LED照明は点灯時の発熱により出力の低下が生じることから,高出力なLEDモジュールの開発においては,放熱性の向上が課題とされている。しかしながら,現在主流のワイヤボンディングによる接合では,LEDの発光面が上部に存在するため熱が外へ逃げにくく,放熱性に限界があった。そのため,基板に直接LEDチップを接合するフェイスダウンボンディングに注目が集まっている。

フェイスダウン構造では,熱源となる発光面が基板側に近付くため,熱を外へ逃がしやすくなる。さらに,ワイヤによる配線スペースが不要になるため小型化が可能となり,また配線自体が無くなるため電気特性が向上するなどの利点も挙げられる。しかしながら,現状の技術では基板に高価なアルミナイトライドを使用する必要があるため,コスト面からシフトが難しいとい。

開発したLEDモジュールは,「AuRoFUSE™」を接合材に使用したフェイスダウン構造を採用し,メタル基板への直接接合を実現した。LEDチップとメタル基板では,熱膨張係数の差異が大きく,通常の接合時には破損が生じる。しかし,「AuRoFUSE™」に含まれるAu粒子が熱膨張時のひずみを緩和する機能を果たし,基板に直接接合することに成功した。

このLEDモジュールは,過度の温度の上下変化に対応できるため,今後需要の見込まれる輸出入時の冷凍倉庫用の照明へ使用することが可能。また,小型モジュールサイズを活かし車載用照明として用いることで車のデザイン性が高まるなど,これまで開発にコストがかさんでいた,あるいは困難であった多種多様な製品製造の裾野が広がるとしている。

この開発では,田中貴金属工業が接合材の「AuRoFUSE™」を製造・提供,S.E.Iがモジュールの製造を担った。この開発により,田中貴金属工業は顧客に対して,より最終製品に近い観点からの材料提案が可能になるとしている。