芝浦工大,レーザーで銅配線を形成

芝浦工業大学は,特定の銅錯体にレーザーを当てるだけで簡単に銅配線が形成でき,電子デバイスの製造プロセスを大幅に簡略化できる技術を開発した(ニュースリリース)。

酸化が進行してしまうために困難だった通常環境(大気中)での銅の処理を可能とし,数10~200μm幅の微小な配線形成ができるとしている。特別な環境下や機器を用いることなく銅配線形成を可能にするもので,ディスプレイやスマートフォンなどを容易かつ低コストに生産する技術として期待されるという。

近年,印刷技術を利用して集積回路やデバイスを作る技術(プリンタブルエレクトロニクス)が注目されている。その配線材料には低コスト・高導電性を持つ銅が多く使われている。しかし,銅は大気中での扱いが難しく,大がかりな真空設備や複雑な作製プロセスを必要とし,結果的にコストや時間がかかる問題があった。

今回,熱分解性をもつ銅錯体溶液をガラス基板上に塗布し,レーザー照射することで銅錯体に化学反応を促し,連続的に照射することで銅を定着させることに成功した。つまり銅微細配線が高速で形成できることを確認した。

この技術では,環境に依存することなく通常環境(大気中)でも銅配線が形成でき,銅以外は気体(CO2など)として空気中に放出されるため複雑な後処置も必要ない。

現在,数10~200μm幅での配線形成が可能であることを確認しているという。また,従来必要であった複雑な工程や,その際用いる処置剤なども不要であるため,大幅なプロセス簡略化に加え,低コストで環境にもやさしい技術だとしている。

今回の技術は,電子ペーパー,デジタルサイネージなどの普及にともない注目されている「プリンタブルエレクトロニクス」のさらなる発展に寄与する可能性があるもの。例えば,図面回路に合わせてレーザーを照射するだけで複雑な回路を形成することなどが可能になる。

同大ではプラスチックのような有機無機ハイブリッド樹脂を基板として用いた軽くて薄く,丸めたり折り曲げたりできるフレキシブルディスプレイの研究も並行して進めており,今回の技術を適用したフレキシブルデバイスの実用化を目指している。今後,企業等と連携し更なる微細配線形成やプロセスの精密化について検討を行なっていくとしている。

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