NECは,8K放送サービスの実現に向けて,8K/60p超高精細映像の圧縮・伸長処理を実現するコーデックの新製品として,エンコーダ「VC-8350」並びにデコーダ「VD-8350」を2016年4月に発売する(ニュースリリース)。
現在、4K・8Kやスマートテレビなど新たな放送サービスの導入に向けた動きがグローバルに進んでいる。日本では総務省の「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」においてロードマップが取りまとめられ,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催時には,4K・8K放送を視聴できる環境の整備が目標とされている。新製品は,このロードマップに則って,8K放送サービスの実現に貢献するもので,日本放送協会(NHK)の協力のもと開発した。
新製品は,映像圧縮にあたり,映像符号化方式として「H.265/HEVC(注6)」を採用し,Main10プロファイル(Level6.1)まで対応している。また,8K/60p超高精細映像データを約500分の1までリアルタイムで圧縮処理を行なうことが可能。さらに音声符号化方式には,MPEG-4 AAC-LCを採用し,最大22.2チャンネルの音声圧縮に対応する。
受信側で使用するデコーダ「VD-8350」は,入出力信号の制御や伝送方式に合わせた信号処理(ベースバンド処理)を行なう本体部分と映像信号の伸張のみを行うサーバー部分の二つのユニットが連結して動作する。ユニット単位で処理を分けることにより,高速かつ効率的に動作させることができ,高品質な映像の再現が可能。
これらにより放送事業者は,既存の衛星放送やIPネットワークなどの伝送路を利用して,視聴者が高い臨場感を体感できる8K放送サービスを提供できる。また,4K高精細映像の圧縮・伸長処理にも対応しているので,4K・8Kの番組が混在する放送サービスの実現も可能。
また,次世代の伝送規格であるMMT(MPEG Media Transport)に対応。MMTは,放送と通信で伝送するコンテンツを同期しているため,受信側で伝送路を区別することなく映像を表示することができる。そのため,放送と通信の両方を活用したハイブリッドサービスの実現が容易となり,高効率な映像・音声伝送を行なうことができる。
新製品のエンコーダは,H.265/HEVCに対応した専用LSIを搭載し,これに同社の高画質アルゴリズムを適用することで,装置の小型化と高画質を実現した。8K/60p対応コーデックを実現するためには,4K/60p対応コーデックと比較して,約4倍以上の処理量とメモリ領域を要する。しかし新製品のエンコーダは,同社の既存製品である4K/60p対応H.265/HEVCエンコーダと同等サイズの5U筐体(幅440mm×奥行670mm×高さ220mm)を実現し,8K放送設備の省スペース化に貢献する。