島津製作所と大阪大学は,高輝度タイプ化と超小型タイプの2種類のファイバー結合型3原色レーザー光源モジュールの開発を発表した(ニュースリリース)。
高輝度タイプは,レーザーテレビやプロジェクターなど高輝度表示装置やレーザー照明向けに開発したもので,赤(R)と緑(G)が10W,青(B)が20Wの出力を持ち,1万ルーメン級以上の輝度の実現を可能にする。一方,超小型モデルは走査型レーザー投射用に開発したもので,主要部の容積を0.5ccの最小クラスを達成した。
いずれも島津製作所が培った可視光半導体レーザーモジュール実装技術「BLUE IMPACTテクノロジー」を基に開発。高輝度タイプは複数の半導体レーザーを空間多重光学系によって1本のマルチモードファイバーに集約させ,超小型タイプはRGBの半導体レーザーを波長多重光学系によって合成させ,シングルモードファイバーで出力する。
開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「グリーンデバイス社会実装推進事業/最先端可視光半導体レーザーデバイス応用に係る基盤整備」で取り組んだ。
今回開発したモジュールを9社(パナソニック,パイオニア,IDEC,QDレーザ,セイコーエプソン,ホンダ,スタンレー電気,三菱電機,日立製作所)の機器メーカーに提供し,走査型レーザー投射装置,高輝度表示装置,レーザー照明において評価。LEDと比較した結果,省エネ性能,色再現性/色協調性,高輝度(高効率),サイズなど,ほぼ全ての項目でその優位性を実証したという。
LEDは内部量子効率は高いが,外部への光取り出し効率に課題がある。その向上に向けては開発が進められているものの,現状は45%にとどまる。
大阪大学 光科学センター・副センター長の山本和久氏は,「レーザーの取り出し効率は100%。今後,内部量子効率を上げることができれば究極の効率となる」と語り,現状の41%を次の開発フェーズで60%に高めていくとし,将来的には80~100%を目指すとしている。
可視光半導体レーザー搭載製品の世界市場は,2030年に約50兆円になると予測されており,赤色,青色に加えて緑色半導体レーザーも実用化され,レーザーディスプレーやレーザー照明など様々な製品への応用展開が可能となっている。
しかし,山本氏は「RGB半導体レーザーを含め,要素技術が急速に立ち上がったものの,製品展開への価値が必ずしも浸透していない。レーザー応用普及のための製品に対する標準化や共通化,安全性などが整備されていなかった」と語る。
今回,大阪大学が中心となり設立された産学連携組織「可視光半導体レーザー応用コンソーシアム」では,3原色レーザー光源モジュールの性能基準や信頼性,安全性に関するガイドラインを策定し,半導体レーザーの初期特性とモジュールの仕様,信頼性について,そのガイドラインを公開した。
2016年4月には安全性とスペックル評価方法を,5月にはモジュールに関する信頼性について,それぞれガイドラインを公開する予定で,国際標準化に向けた提案や支援活動も進めている。公開されたガイドラインはこちら。
コンソーシアムには現在,約50機関が参画しているが,1年後には150機関にし,2020年までに約500機関とし,2030年には約1,000機関を目指すとしており,最終的にはグローバル化も図る計画だ。
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