九大の有機ELベンチャー,15億円の出資を獲得

九州大学が内閣府 最先端研究開発支援プログラム(FIRST)において開発に成功した第三世代有機EL発光材料(TADF)材料)の実用化を担うスタートアップ企業Kyuluxは,総額15億円の資金を調達(2月末予定)し,実用化に伴う技術の特許に関して権利者である九州大学らと実施許諾等を締結,この技術を世界中で実用化できる体制を構築した(ニュースリリース)。

TADF材料は,レアメタルを使わずに,発光の励起子発生メカニズムにかかわる一重項と三重項励起状態のエネルギーギャップを小さくする分子設計により,電子を光へほぼ100%の効率で変換できる新しい有機発光材料。低コスト・高効率発光を可能とし,また,無限の分子設計の自由度を最大限生かせる夢の発光材料の創出と位置付けることができる。

また,蛍光材料を発光材料とする有機EL素子の発光層中に,TADF材料をアシストドーパントとしてドーピングすることにより,蛍光分子からのEL発光効率を究極の100%まで向上させることに成功した。これにより,高効率,低コストに加え,高純度の発色を実現する究極の発光技術Hyperfluorescenceが実現可能となった。

Kyuluxは2015年3月にTADFおよびHyperfluorescenceを実用化するため,安達千波矢,佐保井久理須,安達淳治,水口啓の4名によって設立された技術開発型ベンチャー。現在,福岡市産学連携交流センター(FiaS)を拠点に,九州大学でTADFの材料開発に従事した研究者,企業において有機EL開発に携わった技術者を中心に材料開発を進めている。

今回の九州大学からの基本特許の実施許諾等によって,KyuluxはTADFの製造・販売を独占的に行なうことが可能となる。今後は,九州大学が論文等で公表している材料を中心に,大学等の研究機関へのTADF材料の販売を予定している。また,第二世代のリン光材料で実用化できていない青色のTADF,Hyperfluorescenceの実用化を進めるとしている。

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