東芝は,Bluetooth Low Energy(BLE)に対応する新しい無線受信アーキテクチャを開発した。開発したアーキテクチャは,無線受信機を構成する回路の部品点数を削減することで,世界最小の消費電力での受信に成功した(ニュースリリース)。
IoT(Internet of Things)の普及および健康意識の高まりから,手軽に個人の生活,健康状態を計測し,生体情報をはじめとする計測データを統合的に処理し,有意の情報をユーザにフィードバックできるウェアラブルデバイスが注目されている。
計測データの送受信において,ウェアラブルデバイスで取得したデータをBLEでスマートフォンなどの外部機器へ転送する方法が主流となっている。ウェアラブルデバイスでは小型軽量で長時間稼動のニーズが高く,その実現のため無線通信部の低消費電力化が要求されていた。
新たに開発した受信アーキテクチャは2点の特長を持つ。1点目は,従来2つの信号系統(同相成分と直交成分)のアナログ信号処理回路を用いたデータ復調処理を1系統(同相成分)のみで実現したこと。これは,受信機の回路部品のひとつである周波数シンセサイザーの設定周波数を工夫することにより実現した。
もう1点は,既存製品の復調処理で必要なA/D変換器が不要となったこと。これは,デジタル型周波数シンセサイザーを用いて受信機を構成したことで実現した。周波数シンセサイザーとしての外乱(雑音)除去機能を活かすことで,デジタル型周波数シンセサイザーのみで受信信号をA/D変換する独自の復調処理構成を開発することができた。
これら復調に要する回路ブロック数の削減とA/D変換器を不要とする新しい受信アーキテクチャを採用することにより,同社の試算では,従来のBLEに対応する受信装置のアナログ回路と比べて約10%の消費電力の削減できるという。
ウェアラブルデバイスやインフラ監視用センサネットワークなどでは,更なる低消費電力化が望まれており,同社はこの技術の応用を早期に目指すとしている。
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