JAXA,「だいち2号」による全球森林マップを公開

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,平成26年5月24日に打上げた「だいち2号」(ALOS-2)を用いて全球25m分解能の全球森林マップを開発し,無償での公開を開始した(ニュースリリース)。

昨年,パリで開催されたCOP21で掲げられた温暖化抑制の目標を達成するためには,CO2の重要な吸収源である森林を地球規模で把握・保全することが欠かせない。この課題に応えるために,JAXAでは国際協力機構(JICA)と協力して来年度から「森林変化検出システム」を構築する。全球森林マップのデータは,この基本情報としても使用される予定。

近年,熱帯域・亜寒帯域では森林減少が進行しており地球温暖化の一因となっている。そのため,国連や各国の政府機関でも,森林面積の把握や保全は,温暖化対策の政策決定のための重要な取組みとして位置付けられている。

高い感度と分解能を有する「だいち2号」搭載Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)は,森林(自然林)の有無や森林の土地利用状況などの観測に適した長い波長(約24cm)の電波を用いており,また天候や昼夜によらず観測ができるため,1年の多くが曇で覆われる熱帯域での森林観測に特に適している。

JAXAは,前号機の「だいち」(ALOS)搭載のフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ「PALSAR」を用いて,平成19年から平成22年までの間にも森林面積の観測画像を提供し,その画像はブラジル政府機関によるアマゾンの熱帯雨林における違法伐採監視のためなどに利用されてきた。

しかし,平成23年に「だいち」の運用が終了したことにより,それ以降は同衛星による監視を行なうことができなかった。

JAXAでは,森林分布の把握を通じて地球温暖化対策に貢献すべく,今後は「だいち2号」による全球森林マップを年1回の頻度で提供する予定。

このデータにより森林の空間的・時間的変化から全世界の場所毎の森林の減少・増大の傾向を把握することができるため,各国の政府機関等によりどの地域を重点的に監視・保全していくかといった森林保全計画に利用されることが考えられるという。

関連記事「JAXA,陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の観測画像を公開