阪大ら,「貼るだけ」パッチ式脳波センサーを開発

大阪大学と金沢大学を中心とした医脳理工連携チームは,冷却シートを額に貼るような感覚で,容易に装着することができるパッチ式脳波センサーの開発に成功した(ニュースリリース)。大型の医療機器と同じ計測精度を持つ手のひらサイズのパッチ式脳波センサーであり,リアルタイムに脳状態を可視化することができるという。

大阪大学COI拠点では,産学連携アンダーワンルーフのもと,医学・脳科学・理学・工学が連携(医脳理工連携)して,脳機能を明らかにし人間の状態(感情やストレスの状態)との因果関係を解明する研究を行なっている。これらの情報を基に,人間の各状態に応じた活性化の手法を開発し,社会に提供する脳マネジメントシステムの研究開発を進めている。

脳マネジメントシステムは状態を検知し,活性化手段を提供し,活性化状態を評価し,さらなる活性化につなげるというサイクルを繰り返すが,状態を検知する手段として脳波を測定することが極めて重要な課題となる。

ところが従来の医療用脳波計では,頭部全体に複数の電極を有線で装着し,導電ゲルを頭皮に塗布する手法がとられ,ウェアラブルな脳波計でも頭皮に電極を当てる櫛形電極が必要であるなど,装着者への負担が大きく長時間の装着には耐えられなかった。

また,多くのウェアラブルな脳波計は,装着時に多数のケーブルをともなうことから,例えば子どもの脳を計測することは極めて困難であり,誰でも・どのような状態でも精度の高い脳波計測を行なうには,装着者に負担の少ない脳波計の開発を行なう必要があった。

このプロジェクトで開発した脳波センサーにより,これまで以上に脳波測定が簡易になることで,多くの脳波データを取得することが可能となり,脳と個人の状態との因果関係を解明する一助となるとしている。

さらに今回,アルツハイマー型認知症患者と健常者の脳活動の違いを,額の脳波計測のみで区別できることを突き止めることができた。今後,このパッチ式脳波センサーを利用することで,家庭内,かかりつけ医院,介護施設等で認知症の簡易検査などへとつながる可能性があるという。

また,COIプログラムは,社会実装をひとつの目的としており,脳マネジメントの方法の1つとして,将来的には家庭で脳波を測定し,その結果をもとに測定した個人の状態を判断し,個人の状態にあった活性化手段を用いて,個の潜在能力を常に発揮できるシステムの実現を目指している。

関連記事「グンゼとNEC,衣料型ウェアラブルシステムを開発」「東大,高精度なウェアラブル体温計を開発」「NTT,ウェアラブルレーザ血流センサを開発