豊橋技科大ら,テラヘルツを用いた食物異物検査装置を開発

愛知県が,科学技術交流財団に委託して,大学などの研究シーズを企業の実用化・製品化につなげる産学行政連携の共同研究開発プロジェクト『「知の拠点あいち」重点研究 プロジェクト』の「食の安心・安全技術開発プロジェクト」において,豊橋技術科学大学,名古屋工業大学,富山大学,NTTエレクトロニクス,三井金属計測機工の研究グループは,テラヘルツ波による食品製造工程用の異物検査装置を開発した(ニュースリリース)。

安全な食品の提供のために,食品製造業においては,異物混入対策が進められているが,これまで,紙・布・樹脂包装された食品内部の虫等の異物を検査することは困難だった。食の安心・ 安全への関心が高まる中,このような異物を食品製造工程に組み込まれた形で迅速な検査を行なう装置の開発が求められている。

開発した検査装置は,新規開発した広帯域光源を用いた0.3THz帯のテラヘルツ波発生器,及び,テラヘルツ波検出素子を最適に配置した新規開発の検出器により,ノイズが少なくクリアな透過画像(最高画像分解能1mm)を取得できる。また,高速(生産速度30m/分)で移動する食品等の製品に対して検査が可能。

一般的に,可視光は食品内部を殆ど透過しない。一方,テラヘルツ波は可視光と比べて食品をよく透過する。透過したテラヘルツ波をセンサで受信することにより,食品内部が透けて見える透過画像が得られる。さらに,虫等の異物が食品中に含まれている場合,テラヘルツ波の透過のしやすさが異なるため,異物が混入している様子がわかる透過画像が得られる。

また,テラヘルツ波は,紙,布,樹脂を透過するため,可視光では見えない紙,布,樹脂包装された食品の透過画像も得ることができる。

研究グループは今後,粉末食品,ドライフーズ等の乾燥食品を主な対象として,平成28年度から実証試験を開始し,平成32年度以降に製品化を目指すとしている。

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