立教大学が開発に協力した小惑星探査機「はやぶさ2」搭載の望遠カメラが,12月4日に地球の撮影に成功した(ニュースリリース)。また,同大は,産業技術総合研究所,明治大学と共に画像データの解析を行なった(ニュースリリース)。
「はやぶさ2」は,2015年12月3日に地球に接近してスイングバイを行なったが,地球から離れるときに,搭載しているONC-Tと呼ばれる光学航法望遠カメラで地球を撮影した。ONC-Tでは7つのフィルタを使って撮影することができる。地球や小惑星は太陽の光を反射して光っており,表面にある物質によって反射の性質が異なる。このように,物による反射の性質の違いを利用し,ONC-Tを使って撮れるさまざまな色の画像を比較することで,形だけでなく「そこに何があるか」に関する情報が得られる。
今回の地球観測で得られた画像のうち赤色の画像と赤外線の画像の2枚の情報から,植物のある場所を特定することができた。通常の可視光画像では見えにくかったニュージーランドやアフリカ大陸が確認できる。一方で,植物のない南極大陸は真っ暗に表示される。また,氷と雲はどちらも白く見えるが,氷の方が赤外線の反射率が低いため,区別することもできる。
同大は,2011年12月に「はやぶさ2」プロジェクトに参加。2012年1月から望遠カメラの性能試験を開始し,検討・実験を重ねてきたが,ロケット打ち上げに伴う激しい振動や宇宙の過酷な環境で性能が保たれているかどうか確認する必要がある。
今回の地球観測でしっかりとその性能が発揮されていることを確認できたという。「はやぶさ2」は,この性能を使って小惑星「Ryugu(リュウグウ)」の表面を調べ,有機物や含水鉱物を持ち帰るための着陸地点を決定する。小惑星に到着するのは2018年の予定。
関連記事「千葉工大らの流星観測衛星,軌道投入へ」「北大らの超小型衛星,宇宙用液晶波長可変フィルタによる高解像度スペクトル撮影に成功」「NICT,衛星-地上間の通信に1.5㎛光で成功」