静大,光線力学的療法向け新規化合物を開発

静岡大学は,低侵襲ながん治療・光線力学的療法への応用を目的とした新規化合物を開発した(ニュースリリース)。

副作用がほとんどなく,低侵襲的にがんを治療できる光線力学的療法は,一部の早期がんを障害を残さずに治療できる優れた治療法だが,治療のメカニズムには薬と光,そして酸素が必須であり,低酸素状態にある深部がんには効果が限定されていた。

また,体内に残存した薬が光線過敏を引き越すため,治療後数週間暗室に入院しなければならないため,精神的な負担が問題だった。

そこで,治療効果の向上と投薬量の低減を目的として,酸素に依存しないで作用する薬の開発を目指した研究を推進し,新規化合物の合成でその原理を証明していた。

具体的には,光増感剤(リンポルフィリン化合物)を用いると,がん細胞内でターゲットになるタンパク質から直接電子を奪い酸化できることがわかった(酸素がなくてもがん細胞に酸化ダメージを与える)。

しかし,治療には長波長の可視光線(波長630㎚以上)を吸収する性質が要求されるが,これまでは吸収波長が基準に達していなかった。

今回,臨床で利用可能な波長630㎚以上の基準をクリアし,さらに高い治療効果を示す可能性がある化合物の開発に成功した。これは長波長の可視光を利用し,電子を奪う酸化メカニズムでがん細胞にダメージを与える。また低濃度(半致死量 1 ナノモル/リットル以下)でがん培養細胞に光毒性を与える。

実用化できれば,これまでよりも深部のがんにも高い効果が期待され,さらに薬の投与量を減らすことで,暗室での入院期間の短縮につながる可能性があるとしている。

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