群大ら,炎症を発光させることに成功

群馬大学は熊本大学,理化学研究所およびトランスジェニックとの共同研究により,炎症反応をマウス生体レベルで研究するのに大きく役立つ方法の開発に成功した(ニュースリリース)。

炎症は古くから知られる免疫応答の一つであり,カラダに傷を負ったり,菌やウイルスに感染したりすることで生じる。その炎症の特徴には「発赤」や「発熱」,「疼痛」,「腫脹」,「機能障害」が挙げられ,場合によって肉眼でも炎症部位を見つけ出すことができる。

しかしながら炎症を細胞や分子(遺伝子やタンパク質など)のレベルで詳しく理解するために,最近では様々な生体イメージング(可視化)技術が利用されている。その一環として研究グループは炎症時に活性化するタンパク質(インターロイキン-1β)の性質に着目して炎症を可視化する新たな技術の開発に取り組んできた。

実際に研究グループが行なったのは,ホタルが発光する仕組みとインターロイキン-1 βに備わる性質の遺伝子工学を利用した融合。また,そのとき作成された人工遺伝子をマウスの受精卵に導入して遺伝子組換えマウスを作製した。

さらに,このマウスを用いることで,炎症が生じたカラダの部分を炎症が生じた時にだけ明るく光らせることに成功した。例えば,肝炎を引き起こすような状態では肝臓が,膵炎を引き起こすような状態では膵臓が明るく光る。

ちなみに,このマウスは「IDOL」と名付けられている。今までにもインターロイキン-1βの性質を利用した炎症可視化技術は他の研究グループによって幾つか開発されてきたが,このIDOLマウスは性能面でそれらに勝っている。

ゆえに今後,IDOLマウスからの発光シグナル観察を通して,疾患や外傷など伴われる炎症の状態や抗炎症薬による効果などが今まで以上に容易かつ正確に調べられるようになると期待されるという。また,そのような解析は,将来,ある疾患の原因究明を進めたり,治療薬の開発に繋がったりと広く社会に貢献できるかもしれないとしている。

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