住友ゴム,SPring-8などで耐摩耗200%タイヤを開発

住友ゴム工業は,理化学研究所,高輝度光科学研究センター,日本原子力研究開発機構,高エネルギー加速器研究機構,総合科学研究機構および東京大学と共同で,大型放射光研究施設「SPring-8」,大強度陽子加速器施設「J-PARC」,スーパーコンピュータ「京」の連携活用を進め,タイヤ用ゴム内部の構造と運動性の詳細解析とコンピュータシミュレーションを実施し,タイヤの相反性能である低燃費性能,グリップ性能に加え耐摩耗性能の大幅な向上が可能となる新材料開発技術を完成させた(ニュースリリース)。

タイヤゴム中に形成される階層構造の中で,シリカ界面ポリマーは古くからタイヤゴム性能に大きく関係し,シリカ表面極近傍に束縛されたポリマーとその周囲に存在するポリマーの動きが重要であると考えられてきた。しかし,これまでの分析技術ではシリカ界面における構造と運動性を調べることができないため,タイヤゴムとしての物性とどのように関係するのか十分に分かっていなかった。

研究グループはシリカ表面の改質によるシリカ界面ポリマー構造と運動性を調べるために,J-PARC BL02 (DNA)・BL14 (AMATERAS) 中性子準弾性散乱法,BL16 (SOFIA) 中性子反射率法とSPring-8 BL03XU X線光子相関分光法を用いて研究を進めた。

これらにより得られた構造や運動性について,「京」を用いた大規模分子シミュレーションを実施した。その結果,ゴムを変形した際にゴム内部で生じる様々なストレスや発熱の原因が分かり,このストレスを低減させる材料設計を、シミュレーションを活用して行なった。

そして,ゴムの耐破壊性を評価するためにSPring-8 BL20B2にて高空間分解能4D-CT法を共同開発した。その結果,分子レベルでの破壊現象をシミュレーションし,マクロな破壊現象を4D-CT法でトータルに解析することに成功した。

以上の研究から「シリカ界面ポリマー構造運動」,「硫黄架橋の不均一性・硫黄架橋長さ分布」,「シリカネットワーク運動」をコントロールし,タイヤ三大性能の向上が可能となる「ストレスコントロールテクノロジー」を開発し耐摩耗性を200%にする技術の確立ができたという。

タイヤゴム材料は,まだまだ未解明な部分が多く存在する。住友ゴム工業では,今後も国内の先端研究施設を活用することで,ゴム材料の様々な現象を解明し,高性能で経済性に優れたタイヤの開発が可能になるとしている。

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