JAXA,X線天文衛星「すざく」の成果を報告

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,11月5日(木)に開催された宇宙開発利用部会(文部科学省 科学技術・学術審議会)において,X線天文衛星「すざく」の科学的成果について報告した(ニュースリリース)。

X線天文衛星「すざく」は,宇宙の高温プラズマの高精細な分光観測,および高感度・広帯域の測光・分光観測によりブラックホールの周りの物質の運動や銀河団の形成・進化の問題に新しい光を当てることを目的とし,2005年7月10日に打ち上げられた。

「すざく」は,目標寿命の2年を大幅に超える10年に亘って観測を続けた。国際天文台として世界中の研究者に観測の門戸を開き,平成26(2014)年12月末までに,査読付き論文762件,学位論文227件(うち,博士論文64件)を発表する等,多くの成果創出に貢献した。

広い波長域に亘って世界最高レベルの感度を達成するなど優れた観測能力を実証し,銀河団の合体等による宇宙の構造形成や,ブラックホール直近領域の探査(エネルギー解放や時空構造の解明)等に係る成果を挙げた。代表的なものは以下の通り。

1) 銀河団の外縁部の観測に初めて成功し,銀河団が周辺のガスを取り込んで現在も成長を続けていることを直接検証した。また分光観測で鉄の特性X線の強度を測ることにより,宇宙における鉄の生成が100億年以上も前にほとんど終了していたことを発見した。

2) 宇宙初期に多数存在していた塵やガスに深く埋もれたブラックホールを発見した。初期宇宙(今から100億年以上前)から,銀河中心のブラックホールがどのように成長してきたか,その母銀河の進化に与える影響はどのようなものか,また,硬X線背景放射の起源は何かという問に答えるための鍵となる発見。
3) 恒星質量ブラックホールに落ち込むガスが最後の瞬間に10億度以上に急加熱されることを発見。ブラックホールが存在することの新たな傍証を得た。
※ 10年間の観測で蓄積されたその他の成果は http://www.astro.isas.jaxa.jp/suzaku/flash にまとめられている。

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