秋田大学及び秋田県産業技術センターの研究チームは,電界撹拌技術を用いて,哺乳類の卵子,受精卵に対する新たな蛍光免疫染色手法を開発した(ニュースリリース)。
微小液滴内部に卵を留置した後に,電界によって液滴内部の撹拌を生じさせることで抗原抗体反応を促進し,効率的な染色を可能とした。
具体的には,これまで手術中の病理標本などに対する免疫染色に使用されていた「非接触電界撹拌技術」を,初めて3次元の構造物である「卵」,「胚(受精卵)」の蛍光免疫染色に応用した。
通常は数時間かかる抗体反応時間を,各抗体5分間ずつと短縮し,通常使用する抗体濃度を10倍以上希釈し,微小管の染色強度,退色の程度を検討した。今回の手法では,このような条件下でも観察が可能かつ,退色が軽減されることを確認した。
電界撹拌技術による染色手法については,原理について未解明な点が多くあった。今回,撹拌中における液滴の挙動,液滴内の電流変化などを検討し,液滴内部には電流が流れず,抗原と抗体と物理的な接触頻度が亢進することで,効率的な蛍光免疫染色が行なわれていることを確認した。
卵の形態は撹拌で損なわれず,今後蛍光免疫染色以外にも,発生学の研究に対して電界撹拌技術の応用が期待されるという。
今後はこの技術を用いることで,貴重な抗体の節約や,実験時間の短縮など,発生学の発展に大きく寄与する事が期待されるとしている。また,電界撹拌技術は秋田発の新技術となる。
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