豊橋技科大,半導体結晶成長法で神経電極を開発

豊橋技術科学大学は,半導体結晶成長法により世界最小の神経電極技術を開発した(ニュースリリース)。

脳内の細胞を電気的に複数点で計測する方法は,脳研究において,その機能の理解や,治療において非常に大きな役割を持つ。しかし,これまでの電極技術は,その直径が細胞体(直径数㎛から数十㎛)と比較して非常に大きく,またその電極の硬さから,組織や細胞の損傷,これに伴う長期安定計測の困難さ等,脳計測において多くの課題があった。

これに対し研究チームは,半導体シリコン結晶成長法を用いた微細で柔軟な電極技術を提案してきた。2004年からは,産総研との共同研究を開始し,2010年に直径7㎛以下の電極によるラットの脳からの信号計測に成功した。

2012年に米Michigan大学から世界最小として直径8.6㎛の電極が発表されたがこれはそれを上回るものとして2014年に発表している。

これまで研究チームで開発してきた微細な電極は,その長身化により曲がりやすく脳に刺し入れる強度が弱くなるため,刺入できる長さが200㎛程度に留まっていた。そのため,脳計測において,その計測範囲が限られていた。

今回,新たに溶解性材料であるシルクフィブロインを電極底部の“一時的な支持材”として用いることを提案し,この支持材を溶解させつつ長さ600㎛以上の電極をマウスの脳の深部に表層から刺し入れることに成功した。

これにより,これまで困難とされていた,直径数㎛の微細で柔軟な電極を脳内に刺し入れ,低侵襲で脳深部に多く存在する神経細胞の電気的活動が計測することが可能となった。

今後は,開発した技術を用いて,長期間,安定的に脳内の細胞計測が可能であることを実証していく。さらに,この技術は,電気計測に留まらず,脳内細胞刺激や薬理投与,光刺激による計測応用等にも発展できるため,脳科学研究の発展に寄与する新しいツールとして提供できるとしている。

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