産総研ら,高耐熱性/高反射率の断熱アルミナ膜を開発

産業技術総合研究所(産総研)は川研ファインケミカル(川研)と共同で,高い断熱性能と可視光~近赤外領域にて光反射率70%以上を併せ持つ銀色の高耐熱性アルミナ膜を開発した(ニュースリリース)。

これまでの断熱材の開発は熱そのものの伝達を抑制することが主眼とされてきたが,熱エネルギーは光によっても伝達され,特に高温の環境や高温物体からの黒体放射は周辺環境に膨大なエネルギーを放出する。高い光反射能力を持つ金属は断熱性が損なわれ,高温では酸化されるという欠点を持っているため,高温で使用できる材料で,高い光反射能力を併せ持つ単一素材からなる断熱材は開発されてこなかった。

産総研と川研は,太さが10nm以下,長さが1000nmを超すアルミナのナノファイバーを水性ゾルとして合成することに世界で初めて成功し,その用途の開発を行なってきた。今回,このゾルから作製したアルミナ膜の光反射能力が高いことを発見したことを契機に,高性能な断熱材料としての開発に取り組んだ。

これまでに,アルミナナノファイバーゾルを乾燥させることにより,ナノファイバーが平行に並んだ構造で,透明かつ多孔質の膜が得られている。断熱材として求められる条件の一つに高い空隙率がある。

そこで,ナノファイバー間の反発力を弱め,その配列を乱すことにより乾燥後の空隙率を上げるために,ゾルにアンモニアを添加して乾燥させる方法を考案した。調製条件を最適化したところ,可視光領域から近赤外領域で,優れた光反射能力(具体的には500~1400nmで反射率70%以上)を有する材料の合成が実現できた。

アルミナは酸化物であり,その化学組成からは金属のように光を反射することは説明できない。走査電子顕微鏡(SEM)により,この光反射膜の微細な形態を観察したところ,網目状の層(層状網目構造)が積み上がった構造(積層構造)であることが分かった。

このような積層構造は銀色の光反射を呈する表皮を持つサンマなどの魚類や,真珠の表面層でも見られるもので,この断熱アルミナ膜の銀色は構造色の一種。すなわち,今回開発した光反射・断熱アルミナ膜の光反射能力は生物と同様のメカニズムにより得られたもので,生体模倣材料の一種とも言える。

一方,断熱性能については,乾燥しただけのアルミナ膜の熱伝導率は0.095Wm-1K-1であったが,1000 ℃で焼成することにより,光反射の性能は維持しつつ,0.055Wm-1K-1まで性能が向上した。このように断熱性能と光反射能力のどちらも高温に曝しても維持されているのは,今回開発した膜が無機酸化物であるアルミナだけから構成され,層状網目構造とその積層構造が安定に維持されるため。

研究グループは今後,調製条件をさらに詳しく検討し,断熱性能の向上およびさらに広い波長領域にて高い光反射率を示す,より高性能なアルミナ膜の創製を目指すとしている。

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